映画 この世界の片隅に ☆☆☆

■ 2016年 126分 (センチュリーシネマ)
■ 監督 片淵須直
■ 原作 こうの史代
■ 脚本 片淵須直
■ 作画監督 松原秀典
■ 撮影監督 熊澤祐哉
■ 画面構成 浦谷千恵
■ 音楽 コトリンゴ

 
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ブラインド・マッサージ ☆☆☆☆

■  推拿 2014年 中国/フランス 115分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督 ロウ・イエ
■ 原作 ビー・フェイユ
■ 脚本 マー・インリー
■ 撮影 ツアン・チアン
■ 音楽 ヨハン・ヨハンソン
■ 出演 ホアン・シュエン
       チン・ハオ
       グオ・シャオトン
       メイ・ティン

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光を見る目 闇を見る目

ツアン・チアンの撮影が素晴らしい。
盲人が捉える周りの気配や、微かな風景のかたち
はこのような見え方をするのだろうかと思わせる。
さらに、男女の身体の手触り、息づかい、声までも
映像として見せてくれる。
 
ヨハンソンの音楽が素晴らしい。

彼らの心情、風のそよぎ、やさしい雨の音、南京の
町を奏でるような音楽だ。

ロウ・イエの映画は、どうして観る者の心を強くゆさ
ぶるのだろう。ときにはげしく、ときにしずかに。
そして
観客それぞれの体のなかに何かをのこしていく。
      

映画 哭声 コクソン ☆☆☆

■ 2016年 韓国 156分 (ミッドランドスクエアシネマ2)
■ 監督 ナ・ホンジン
■ 脚本 ナ・ホンジン
■ 撮影 ホン・ギョンピョ
■ 音楽 チャン・ヨンギュ
       タルバラン
■ 出演 クァク・ドウォン
       國村隼
       チョン・ウヒ
       ファン・ジョンミン

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疑え。惑わされるな。


「チェイサー」(08)、「哀しき獣」(10)のナ・ホンジン監督
の最新作である。
新作「哭声」が発する熱気も尋常ではない。
ナ・ホンジン監督の粘り濃い演出が奥に光っている。

引き千切られるように惨殺される村人たち。
事件が起こるのはいつも雨。
禍々しい殺人現場。

真相はどうだったのか。

救いはあるのか。

わめき声。
異形の人影。
不可解な行動。

粘り濃い演出で最後まで押しきるように描いた不条理劇。
それは、「チェイサー」「哀しき獣」よりも赤裸々で残酷な描
写の連続だった。

観客の私たちは共鳴するか。あるいは違和を感じるか。
それがこの映画の面白いところだ。



 

DVD 韓国ドラマ 砂時計 ☆☆☆

■  1995年 韓国SBS 全24話
■ 演出 キム・ジョンハク
■ 脚本 ソン・ジナ
■ 出演 チェ・ミンス
       コ・ヒョンジョン
       パク・サンウォン
       イ・ジョンジェ

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全24話、およそ1120分に及ぶ堂々たる長編
メロドラマである。

「メロドラマ」の辞解は広辞苑では次のように記されている。

メロドラマ【melodrama】=melodic+drama
もと、18世紀イタリアに起こった、音楽を伴奏として台詞の
朗誦を行う劇。
後に、波瀾に富む感傷的な通俗恋愛劇。



肝心なのは「波瀾」の部分だ。

80年代に起こった光州事件。
現在も続く「政治と金」、「ヤクザと政界」、「コネと出世」。
恋愛と友情、因縁と報復、義理と私憤。
反抗と僕従、家族と組織についてのドラマである。

話の中心人物は、
カジノ界の大物の娘ヘリン
ヤクザのテス
検事のユソク
そして、ヘリンのボディガードのジェヒ。




寡黙なジェヒを演じるイ・ジョンジェ
の存在感が
素晴らしく、この物語を豊かなものにしている。
感傷的な場面は多々あるが、彼の存在と光州
事件とがメロドラマに硬質さを与えている。

ドラマの終わりに近づくことが惜しまれる作品だった。



ホワイト・バレット ☆☆☆

■ 原題「三人行」 2016年 香港 88分
             (シネマスコーレ)
■ 監督 ジョニー・トー
■ 脚本 ヤウ・ナイホイ
       ラウ・ホーリョン
       マク・ティンシュー
■ 撮影 チェン・チュウキョン
         トー・フンモ
       ブライアン・チェン
■ 音楽 ザヴィエル・ジャモー
       ロー・ターヨウ
■ 出演 ヴィッキー・チャオ
       ルイス・クー
       ウォレス・チョン

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ジョニー・トーの最新作。
緊張感に満ちた展開はさすがトーだと感心する。

大部屋の病室。
入院した容疑者と監視する刑事。
病床に横たわるさまざまな患者。
彼らに対応する医師や看護士たち。

本当にこの場所で銃撃戦が始まるのか。
いつ、どのようにして?!

88分のサスペンス。
香港映画はやはり魅力がある。
ジョニー・トーは今も健在である。
深夜の観客たちはトーのフィルムに魅入った。


   

映画 肉体の冠 ☆☆☆

■ CASQUE D'OR(「金髪(の女)」の意?)
   1951年 フランス 98分  (名古屋シネマテーク)
■ 監督 ジャック・ベッケル
■ 脚本 ジャック・ベッケル
       ジャック・コンパネーズ
■ 撮影 ロベール・ルフェーヴル
■ 音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス
■ 出演 シモーヌ・シニョレ
       セルジュ・レジアニ

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娼婦マリーのシモーヌ・シニョレの魅力は

男を断頭台に誘う。




映画 牯嶺街少年殺人事件 ☆☆☆☆☆ 

■ A BRIGHTER SUMMER DAY 1991年
   台湾 236分 デジタル・リマスター版 
        (ミッドランドスクエア シネマ) 

■ 監督 エドワード・ヤン(楊徳昌)
■ 脚本 エドワード・ヤン
       ヤン・ホンカー
       ヤン・シュンチン
       ライ・ミンタン
■ 撮影 チャン・ホイゴン
■ 出演 チャン・チェン
       リサ・ヤン
       ワン・チーザン
       クー・ユールン

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3時間56分の長さで描いた少年譜の傑作!
そのみずみずしさ、生々しさは尋常ではない。


登場人物のすべてが映画のなかで生き、暮らし
ていることをまざまざと感じさせる畏るべきエド
ワード・ヤンのフィルム。


小四、小明、小猫王、飛機、小馬、小虎、ハニー
滑頭、山東、神経、父、母、兄、姉、妹、汪、教師
小明の母、近所の大人・・・・。
中心に描かれるのは
小四少年の感じる前途への憧れと失望。
そして、焦燥、苦悶や衝動。

監督ヤンはそれを繊細に鮮烈なショットで語ってゆく。


たとえば、繊細なショット。
小四と小明が廊下で立ち止まり会話を交わす姿
を木製の扉に写ったかげでとらえたショット。
ふたりのかげはあまりにも、あいまいではかなげ。
そこからは、揺らめくような青春の瞬間が伝わっ
てくる。一瞬の甘美で切ないとき。

鮮烈さで印象に残った圧巻のショットはこうだ。
どしゃぶりの夜、山東一味の店に乗り込み、サニー
の仲間たちが刀剣を使って報復しようとするシーン。

入った店内は停電で暗い。
襲撃仲間のひとりが小さくつぶやく。
「家へ・・・帰ってもいいかな」
(たぶん皆も心の底では怖いのだ)
それを無視して2階に上がる仲間たち。

ぼぅーと照る赤いろうそく。
浮かびあがる山東たちの顔。
気配を感じた山東が灯りをふっと吹き消す。
それを合図にわっと襲う者、襲われる者。

闇で何も見えず、滅多矢鱈に長刀を振りまわす。
その姿さえ、カメラは闇の中のままで映す。
響く怒号と悲鳴。
延々と続く暗闘のショット。



そのようなショットだけに限らない。
全編がみずみずしく、生々しく、繊細なショットで綴
られた
ヤン
の映画「A BRIGHTER SUMMER DAY」は
4時間の長さが当然のように必要だったのだ。

  

映画 THE NET 網に囚われた男 ☆☆☆

■ THE NET 2016年 韓国 116分
         (名古屋シネマテーク)
■ 監督 キム・ギドク
■ 脚本 キム・ギドク
■ 撮影 キム・ギドク
■ 音楽 パク・ソンミン
■ 出演 リュ・スンボム
       イ・ウォングン
       キム・ヨンミン
       チェ・グィファ
       イ・ウヌ

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小船のトラブルで韓国領域に流された北朝鮮の男。


韓国では予断・難詰に満ちたスパイ容疑での取り調べ。
容疑のあからさまな捏造。飴と鞭の脱北への誘惑。
その後の男はどうなる?
以上が、映画のシノプシスである。

キム・ギドク映画としては、判りやすい内容と表現を持ち
韓国と北朝鮮の分断の現状がストレート伝わってくる。
互いの疑心暗鬼がさらなる不信を深めていく現状。
さらに家族内の悲劇も深まっていく。


映画の主人公ナム・チョルは低所得者で脱北者ではないが
2017年3月1日付けのT新聞に、韓国社会における脱北者
の現状についての特集記事が載っていた。

大見出しは「韓国の脱北者3万人時代」。
「生活に失望、自殺者も」「曲がり角の定着支援策」
脱北者数の変化の棒グラフ。
2007年から2011年は年間2500人~3000人。
2012年以降は1500人に減少。
ここでいう脱北者は、北朝鮮からだけではなく、一旦中国へ
逃れて幾年か暮らした後に韓国へ渡った人々も含まれる。
監視の厳しさから判断すると、そういう人の方が多いかもし
れない。

逃れても安住の地はなく、生れた国は生きられない。
一体どうすればよいのか。

映画と新聞記事から隣国の苦悩の深さを、今更ながら
思い知らされた。