映画 壁あつき部屋 ☆☆☆☆

■ 1956年 製作 新鋭プロ 配給 松竹 110分 
                (シネマスコーレ)
■ 監督 小林正樹
■ 脚本 安部公房
■ 撮影 楠田浩之
■ 音楽 木下忠司
■ 出演 浜田寅彦 三島耕
       信欣二   三井弘次
       伊藤雄之助 内田良平
       小林トシ子 岸恵子

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BC級戦犯者の群像劇は、個人の意思を
圧殺する軍権力の非情を暴き出す!




安部公房が脚本を書いたせいか
随所に不条理劇のようなライティングや
サスペンス劇のようなカッティングが見られ
小林正樹の意欲の程がうかがえる。

また、小林の堅い意志に支えられた本作は
軍属上層部を痛烈に批判する視点が貫かれ
正義感にあふれている。


当時の松竹は、この作品を3年間「お蔵入り」に
したという。

今も新聞読むたび感じるのは、
アメリカに遠慮する態度を見せる日本の政治家。
あたふたと恭順の姿勢を示す日本の企業経営者。
60年前も今日も何ら変わっていないように見える。


戦場に駆り出されて理不尽に処断されていった
名もなき普通の人たち-日本のBC級戦犯者。

DVD 娘・妻・母 ☆☆☆

■ 1960年 東宝 123分 (レンタル TSUTAYA
■ 監督 成瀬巳喜男
■ 脚本 井手俊郎  松山善三
■ 撮影 中古智
■ 音楽 斎藤一郎
■ 出演 三益愛子  原節子
       森雅之    高峰秀子
             草笛光子  団令子

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東宝のオールスターを出演させた中産階級の
家庭劇映画で、当時、客が入ったとされるカラー
作品。


嫁と姑が互いに遠慮や気兼ねを感じる場面、遺
産相続をめぐってドライな会話が交わされる場面
など、成瀬監督の上手い演出が感じられる。


私には、「養老院」から「老人ホーム」に名を変えて
いく昭和30年代中期の高齢者事情が扱われてい
るのが、興味深かった。

三益愛子や杉浦春子の演じる初老の人物が、息子
夫婦に勧められて老人ホームを見学にいくのだが、
帰り道で二人が歩きながら会話を交わす。

ちょっとあそこに入る気にはならないわねぇ。
若い夫婦と気まずくても、家の方がよいのだ。

二人は経済的に困窮していないし、健康でもある。
家の方がいいと言える境遇と時代を描いた「娘・妻・母」。

平成29年現在の老人問題の実情を、当時の脚本家や
監督は知るべくもなかった幸福な時代の映画ともいえる
作品だ。


DVD 鬼婆 ☆☆☆☆

■ 1964年 近代映画協会 100分 (レンタル TSUTAYA)
■ 監督 新藤兼人
■ 脚本 新藤兼人
■ 撮影 黒田清巳
■ 音楽 林光
■ 出演 乙羽信子
       吉村実子
      
佐藤慶

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本能的に獣性を人間は有し、戦乱時には
それがとりわけ剝き出しになるのです。
食欲、性欲、嫉妬・・・。
ほら、この鬼婆のように。


この映画を初めて観たのは、高校生の頃だった。
学校での中間試験か、期末試験かは忘れたが
それが終わった日の午後、同じ部活の友人とふ
たりで柳橋にあった
atg作品の上映館名宝文化
に行った。
併映は三島由紀夫が監督・主演の「憂国」。
2作品とも、エロスと、血と、死の匂いが濃厚で
陰影の深い刺激的なモノクロール映像。
固唾を何度も飲み込み、心臓がどきどきとした
記憶がある。


「鬼婆」50年後に観て再発見したのは、葦原の
撮影の美しさ、吉村実子の肉体の輝き、そして
新藤兼人の、偽りのない人間の姿の追求への
熱気だった。




DVDの特典で新藤兼人、佐藤慶、吉村実子の
撮影時の「思い出語り」が付いている。

それを聴くと、ロケ合宿で蛾の襲来に悩まされた
ことや、吉村実子が全裸で走ったエピソードや、
佐藤慶はシャイな俳優であることなどが判り、
映画作りの苦闘と悦びが伝わってきた。




次々と製作、上映される昨今の新作映画。
いたずらに流行に追従せず
自分の目で、耳で、多くを発見できる映画と巡り
合える1年にしたい、と思う。
それが、映画館であっても、DVDであっても・・・。


 

DVD 血槍富士 ☆☆☆☆

■ 1955年 東映 94分 (レンタル TSUTAYA
■ 監督 内田吐夢
■ 企画協力 伊藤大輔 小津安二郎 清水宏
■ 原作 井上金太郎
■ 脚本 三村伸太郎
■ 撮影 吉田貞次
■ 音楽 小杉太一郎
■ 出演 片岡千恵蔵

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よくも貴様ら、御主人様を!
この権八、槍持ち風情の下郎なれど、
大事な槍を血に染めて、修羅場の中で大立ち回り!


これほど片岡千恵蔵が圧倒的でスピーディーな動きが
出来る役者だったとは。

内田吐夢が創りだした果てしなく続く大殺陣の演出。

横移動を巧み生かした吉田貞次の撮影の迫力。

この映画を撮影したキャメラマン吉田こそ、18年後に
深作欣二の「仁義なき戦い」の撮影で、叩き付けるよ
うなさらなる迫力ある映像を私たちの前に見せるその
人だった。




映画 14の夜 ☆☆☆☆

■ 2016年 114分 (シネマスコーレ)
■ 監督 足立 紳
■ 脚本 足立 紳
■ 撮影 猪本雅三
■ 音楽 海田庄吾
■ 出演 犬飼直紀 青木 柚

       中島来星 河口瑛将
                光石 研

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よくしまる今日子のサインを求めて出かけた夜に
タカシの隠し玉は、思春妄想の花火と散るのか。

誰もが体験した中学期
無知と未知がコンガラガッテ
空想が妄想にフクラミウズマク。

足立紳の監督デビュー作は
大いに笑わせる性春グラフティ。

若く苦い自己嫌悪と無力感
そして内なる自己の萌芽の自覚
を描く力作だった。


タカシのカッコ悪い父親を演じた光石研
が何故か印象に残り、
レンタルビデオ店の女店員役の内田慈
の胸が聖母のそれのように思われた。




2017年の私の映画幕開け劇場は
名古屋駅西のシネマスコーレ。

2列目の席に座った上映前
最前列の男性観客を
素早くペンスケッチさせてもらいました。



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