DVD シシリーの黒い霧 ☆☆☆☆

■ SALVATORE GIULIANO 1962年 イタリア 124分
                                                      
 (購入・Amazon)
■ 監督 フランチェスコ・ロージ
■ 脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーコ
              フランチェスコ・ロージ
       エンツォ・プロヴェンツァーレ
       フランコ・リリナス
■ 撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
■ 音楽 ピエロ・ピッチオーニ

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シシリー島の独立運動にまつわる政治的暗殺の謎。



射殺された青年の名は、サルバトーレ・ジュリアーノ(映画の原題)。

独立義勇軍に加わった山賊の若き首領である。


映画の時制は1950年、1945年、1950年、1946年、1950
年、1960年など目まぐるしく変わる。

加えて、組織関係は複雑で、独立義勇軍、マフィア、地主勢力、
ファシスト政府、イタリア解放委員会、人民連合派新政府、共産
党員、憲兵隊、警察などが奇怪な離合集散を展開する。


果たして、だれの指示でサルバトーレはメーデーの襲撃を行った
のか。そして、誰の差し金で殺されたのか。


死体は語ることをしない
だから、F・ロージ監督は政治の暗部を、白日に晒された血を、
コントラストの強い画面に焼き付けて見せるのだ。


余談ながら、F・ロージ映画のDVD化は遅れているように思う。
「都会を動かす手」「黒い砂漠」「ローマに散る」など観たいものだ。



スケッチ 猫筥(NEKOBAKO)

万年筆でスケッチするとどんなふうになるのか。

自作の陶器(猫筥)をスケッチした。

・万年筆と、耐水性ペンとで、個々に線描し、後に彩色。

・上-万年筆画(インクは「プラチナ社・カーボンインク」
        万年筆は「パイロット社・カクノ細」)
・下-水彩ペン画(ペンは「パイロット社・プチ細字」)

      20161026 猫筥のスケッチ2

万年筆を使うと、つい線を描き込みたくなるが、その気持ちを
抑えて大まかに描く。ただし、影の部分は線を使った。

彩色はいつも使っている水彩絵の具を使用。
「滲まない」との評価が高いプラチナのカーボンインクで描くと
本当に滲まないので、びっくり!


やってみての感想は、万年筆画も面白そう、である。


*「犬筥」はあるが、「猫筥」はあまり商品化されていないと思う。
香合の器のように上下に分かれ、中には小物を入れて楽しむよう
「犬筥」に倣ってつくってみた。
なぜ「猫筥」かと言えば、犬より猫の方が好みだから。
製作に際しては家人にずいぶんと手伝ってもらった。

DVD わが友イワン・ラプシン ☆☆☆☆

■ MOI DRUG IVAN LAPSHIN 1984年 ソ連 100分
                                                        
  (レンタル・GEO)
■ 監督 アレクセイ・ゲルマン
■ 原作 ユーリ・ゲルマン
■ 脚本 エドゥアルド・ヴォロダルスキー
■ 撮影 ワレーリー・フェドーソフ
■ 音楽 アルカジー・ガグラシヴィリ
  
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ゲルマン監督が描くのは、かってのソビエト連邦の
人々とその風景。

どうやら1930年代半ばのスターリン時代の或る
町での出来事を描いているらしいのだが、映画か
らだけでは詳しいことはわからない。

画面から伝わってくるのは、社会主義の希望めいた
何かと、暗く苦い現実。

それとても、ソビエト社会主義の行詰まりを知った
私たちが今の目から見ている所為かもしれない。





ぬかるみ。
吐く白い息。

田舎の楽隊。
夜の喧騒。

暗鬱な風景。
追う者と追われる者の殺し合い。






ゲルマンの映画は、名状しがたい強い印象を
観る者の脳裏に強く残す。


DVD 若者のすべて ☆☆☆☆

■ ROCCO E SUOI FRATELLI (原題『ロッコとその兄弟』)
   1960年 
イタリア/フランス 177分
                  
  (レンタル・GEO)
■ 監督 ルキノ・ヴィスコンティ
■ 原案 ルキノ・ヴィスコンティ
       ヴァスコ・プラトリーニ
■ 脚本 ルキノ・ヴィスコンティ
       スーゾ・チェッキ・ダミーゴ
       バスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
       マッシモ・フランチオーザ
       エンリコ・メディオーリ
■ 撮影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
■ 音楽 ニーノ・ロータ
■ 出演 アラン・ドロン
       レナート・サルヴァトーリ
       アニー・ジラルド
       カティナ・パクシヌー

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モノクロームが深い陰影を刻むイタリアの家族劇。

物語の主人公は次男ロッコ(アラン・ドロン)。

しかし、真の主人公は母親ロザリア(カティナ・パクシヌー)
ではあるまいか。それほどの存在感をもってヴィスコンティ
は母親を描いているからである。


イタリアの家族劇映画は女の存在が大きいように思う。

先日観た「人間の値打ち」も女の役割、存在が物語の
重い部分を占めていた。

この「若者のすべて」(原題『ロッコとその兄弟』)も、一
見男が物語のイニシアチブをとっているように見えるが
女の言葉や行動、存在そのものが、男を圧倒していく。
娼婦役のアニー・ジラルドの存在感も尋常ではない。


ほとんど3時間に達する長尺の作品ながら、達者な役者
たちの演技に魅かれつつ、イタリア貧困層に生きる家族
の物語に引き込まれてつい最後まで観てしまった。


 

映画 人間の値打ち ☆☆☆

 IL CAPITAL UMANO 2013年 イタリア/フランス
                109分 (センチュリーシネマ
 )
■ 監督 パオロ・ヴィルズィ 
■ 原作 スティーヴェン・アドミン
■ 脚本 フランチェスコ・ブルーニ
       フランチェスコ・ピッコロ
                パオロ・ヴィルズィ
■ 撮影 ジェローム・アルメーラ
■ 音楽 カルロ・ヴィルズィ
■ 出演 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ 

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冒頭に或る交通事故が示される。

そして、話は三つの章に分けて進む。

不動産屋ディーノの章
富豪の妻カルラの章
ディーノの娘セレーナの章

事故の真相が徐々に明かされていくが
観客の予想は途中で何度も巧みにはぐ
らかされ、さらに結末への期待は高まる。
上手い語り口だ。

これ以上のことは、未見の人たちのために書かない。

映画館で味わってもらうしかない。

     

映画 シン・ゴジラ ☆☆☆

■ 2016年 120分(ミッドランドシネマ名古屋空港)
■ 監督 脚本 編集 庵野秀明
■ 監督 特技監督 樋口真嗣
■ 准監督 特技統括 尾上克郎
■ 撮影 山田康介
■ 美術 林田裕至
■ 音楽 鷺巣詩郎
■ 出演 長谷川博己

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この作品は一種の戦争映画だともとれる。

ニッポン対ゴジラ。


しかし、敵のゴジラを暗喩-ある象徴として
作り手たちは位置付けているのは明らかだ。

たとえばニッポンの仮想敵国-北の国、西の国、
あるいは東の国。
または、自然災害や人工厄災のすべてなどを容
易に想起させる作り方をしている。

映画は、政府の中枢にある者たちの対処ぶりを
大真面目に描く一方、市井の人々の避難等は点
描程度にしか扱わない。

ゴジラが踏み潰したであろう人間の変わり果て
た姿などは全く写さない。

ひたすら描かれるのは、大量の砲弾攻撃と勇まし
い戦闘員たちの姿、そしてまるで日本を自分が背
負っているかのような政治家、官僚の輩どもの言
動。

以上でとどまるなら、凡庸な戦争映画である。


しかし、この映画は違う。
庵野たちが創りだしたゴジラは聖なる悪霊だったのだ。

一つ、驚きの変態を繰り返しながら進化をとげ、高
層ビル群に比肩するほど巨大化する姿。

一つ、断末魔の苦痛を追い払うように熱線を放射
するときの怒髪天を衝く形相の物凄さ。

一つ、エネルギー源が貯蔵されているはずの原発を
未だ襲わないゴジラの思惑。

一つ、ニッポンの首都に塩漬け状態で静止している
ゴジラの不気味。

ゴジラは、いつか動き出す。

ゴジラの象徴するものは、おそらく突然と起動する…。
そのことは誰が見ても想像に難くない。


映画 永い言い訳 ☆☆

■ 2016年 124分 (ミッドランドシネマ 名古屋空港)
■ 監督 西川美和
■ 脚本 西川美和
■ 
撮影 山崎裕
■ 
主演 本木雅弘

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主人公の幸夫は、最後には満たされたのだろうか。

大宮の子供たちに?


あるいは、何かを満たし得たのだろうか。

真平と灯を?





この映画の核は、幸夫の「内に在る渇き」なのだろう。

乾いているのだが、うじうじと湿ってもいる。



不幸を選び取ったような主人公の、最後まで変わらない

さまに(と私には思えて)いささか辟易しながらの124分

だった。


DVD ビリディアナ ☆☆☆

■ VIRIDIANA 1960年 スペイン 91分
               
   (レンタル・GEO)
■ 監督 ルイス・ブニュエル
■ 脚本 ルイス・ブニュエル フリオ・アレハンドロ
■ 撮影 ホセ・フェルナンデス・アグアィヨ
■ 出演 シルヴィア・ピナル 
        フェルナンド・レイ

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ルイス・ブニュエルは価値観をひっくり返す。

聖職とは
修道女とは
美醜とは



ブニュエルは駁撃する。

貴賤の境界
善意に潜む欺瞞



ブニュエルの映画はスキャンダラス。

ブニュエルは人の本性についてのシネアスト。

  

映画 七人の侍 ☆☆☆☆☆

■ 1954年 東宝 207分
  (TOHOシネマズ 名古屋ベイシティ・スクリーン1)
■ 監督 黒澤明
■ 脚本 黒澤明 橋本忍 小国英雄
■ 撮影 中井朝一
■ 美術 松山崇
■ 音楽 早坂文雄
■ 出演 三船敏郎 志村喬
    
    木村功  宮口精二

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待ちに待った「七人の侍」の4Kデジタルリマスター

の公開である。

ほんとうに驚いた!

4Kデジタルリマスター処理された映像と音の鮮やかなこと。

期待以上である。




過去に映画館で3回、テレビ放映で1回、DVDで

5回観た黒澤明の「七人の侍」の印象は一変した。

今回の映像体験は別格!最高である。



映画「七人の侍」。

おそらく本邦活劇時代劇映画の極致。

黒澤明がフィルムに描いた渾身の雄編。



この映画は幸せである。

時間と手間、費用と才能を惜しみなく注ぎ込んで

完成した日本映画黄金期の超大作と呼ぶにふさ

わしい映画として、いま鮮明に蘇えったのだから。



上映時間の3時間半は至福の時だった。

DVD 最後の億萬長者 ☆☆☆☆

■ LE DERNIER MILLIARDAIRE
   1934年 フランス 92分
                
(レンタル・GEO)
■ 監督 ルネ・クレール
■ 脚本 ルネ・クレール
■ 撮影 ルドルフ・マテ  ルイ・エネ
■ 音楽 モーリス・ジョーベール
■ 出演 マックス・デアリ-  ルネ・サン=シール
       マルト・メロー     レイモン・エイムス

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今の時世にも十分通じる風刺の利いた映画。

しかし、冷徹非情な印象は全くなく、楽しい諧謔
センスに溢れた作品となっている。

それは、愚かな人間に対してのルネ・クレール
のまなざしには温かみがあるからだろう。

人間は愛すべき愚かさをもった生き物である-
といった寛容さ、達観が感じられる。

脚本、演出、美術、演技。
80年前に生きたフランス映画人の才覚の
なんという大きさ!



DVD 日曜はダメよ ☆☆☆

■ POTE TIN KYRIAKI 1960年 ギリシャ 92分
                   (購入・Amazon)
■ 監督 ジュールス・ダッシン
■ 脚本 ジュールス・ダッシン
■ 撮影 ジャック・ナットー
■ 音楽 マノス・ハジダキス
■ 主演 メリナ・メルクーリ

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J・ダッシンが、「赤狩り」でアメリカを離れて
ギリシャで撮った映画。

ヨーロッパの人々の陽気な気性と、生き生
きとした売れっ子娼婦の姿を描いている。

  


この映画のよさは、何といっても
メリナ・メルクーリが魅力的なこと。

監督ダッシンのメルクーリを想う
情熱の強さゆえか。



ダッシンは4年後にメルクーリで「トプカピ」を
創り、その2年後の66年に彼女と結婚。
その後もずっと二人は死ぬまで暮らす。



「日曜はダメよ」でもう一つ忘れられないもの。
ハジダキスの主題曲。

半世紀を経ても耳に残るのはどうしてなのだろう。
「第三の男」のテーマ曲と蓋し双璧と言うべし。