映画 ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS WEEK ☆☆☆☆

■ THE BEATLES:EIGHT DAYS WEEK
 -THE TOURING YEARS
   2016年 イギリス 140分
(TOHOシネマズ名古屋ベイシティ) 
 

■ 監督 ロン・ハワード
■ 脚本 マーク・モンロー
■ 編集 ポール・クラウダー

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当時の未公開映像を使ったドキュメンタリー。

特別なお楽しみが、最後に残されている。




それは1965年に行われたシェイ・スタジア
ムの伝説的なライブ(撮影:アンドリュー・ラ
ズロ)のフイルムである。

しかも、高解像度処理されたリマスター映像で。
5.1サラウンドでクリアになった音源で。



音楽に生きる4人の若き絶頂期の演奏。
興奮する大観衆・大聴衆。



才能あふれる演奏の連続に胸が熱くなる。
同時代に生きたことの幸せを味わう30分。




ぜひ映画館の大型スクリーンで観るよう。聴くよう。

そうでなくては、この興奮と感激は味わえぬ。



映画 エル・クラン ☆☆☆☆

■ EL CLAN(「一族」の意)  2015年 アルゼンチン 110分
                               (センチュリーシネマ)
■ 監督 パブロ・トラペロ
■ 脚本 パプロ・トラペロ
       フリアン・ロヨラ
■ 撮影 フリアン・アペステギア
■ 音楽 セバスティアン・エスコフェット
■ 出演 ギレルモ・フランセーヤ
       リリー・ポポヴィッチ
       ピーター・ランサーニ

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独裁政権が終わった後にも続ける歪んだ犯行。
人質殺害を当然のように行う略取誘拐だ。

それはブッチオ家の父親アルキメデスが生活費
を得るための行為、つまり仕事だった。



映画の画面は焦点の浅い撮影で綴られていく。
登場人物たちの視野の狭さ、もしくは見ないふり
の様を暗示しているのだろうか。

全編にわたって音楽はリズミックなハードロック。
登場人物たちの耳には他者の苦悩の声は聞こえ
ず、自分の理性にも耳を覆う態度を表して暗示的
である。




独裁政治の混迷がもたらした一家の悲劇、と一
言で片付けられないおぞましさが漂う映画。

父親役のギレルモ・フランセーヤの目。
母親役のリリー・ポポヴィッチの笑顔。
何とも不気味であった。

DVD ニノチカ ☆☆☆☆

■ NINOTCHKA 1939年 アメリカ 110分
■ 監督 エルンスト・ルビッチ
■ 脚本 ビリー・ワイルダー
       チャールズ・ブラット
               ウォルター・ライシュ
■ 撮影 ウイリアム・H・ダニエルズ
■ 音楽 ウェルナー・リヒャルト・ハイマン
■ 
出演 グレタ・ガルボ  メルビン・ダグラス   

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革命後のソビエト連邦から、女闘士がパリの町に。
名前はニノチカ。

グレタ・ガルボの魅力。
ワイルダーたちが書いた脚本の軽妙さ。
脇役のキャラクターの面白さ。

映画を観ることの楽しさと、自由であることの喜び
とが存分に味わえる好編だ。










DVD 按摩と女 ☆☆☆

■ 1938年 松竹 66分
■ 監督 清水宏
■ 脚本 清水宏
■ 撮影 斎藤正夫
■ 音楽 伊藤宣二
■ 
出演 徳大寺伸 日守新一
       高峰三枝子

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盲目の按摩二人、徳市と福市。
どちらも向っ気の強さと勘の鋭さの持ち主。

二人をカラかう目明きの人たち。
目明きをやり込める盲目の二人。

その仕種が醸し出す可笑しみ。
山あいにある温泉町ののどやかな風情。

訳有りそうな色香ただよう女。
徳市の恋。

清水宏の脚本の面白さ。
モノクローム画面のうつくしい映画。


 

映画 イレブン・ミニッツ ☆☆☆

■ 11MINUT 2015年 ポーランド/アイルランド 81分
                             (名古屋シネマテーク)
■ 監督 イエジー・スコリモフスキ
■ 脚本 イエジー・スコリモフスキ
■ 撮影 ミコライ・ウェブコウスキ
■ 編集 アグニェシュカ・グリンスカ
■ 音楽 パヴェウ・ミキェティン

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問題をかかえている人の
あるいは、問題をかかえていない人の
それぞれの事情と状況が断片的に映し出される。

(断片はいつかぶつかる、ぶつかる)
(何か起こる、起こる)
そしたら、観客の予想どおりの展開。

(こんな展開法は、既知の映画でも
よく使われている手法なのだが‥)

それでも、イエジー・スコリモフスキの
映画は鮮烈に記憶に残るのだ。

撮影、編集、音楽が巧みなせいかも
知れない。
 
スコリモフスキ映画の身上は、細部描写と
人物心理の鋭さにあるが、この作品では
希薄であった。

次回作に期待したい。

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DVD 有りがたうさん ☆☆☆☆

■ 1936年  松竹 78分
■ 監督 清水宏
■ 原作 川端康成
■ 脚色 清水宏
■ 撮影 青木勇
■ 音響効果 斎藤六三郎
■ 出演 上原謙 桑野通子

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映画を観た後で、原作とされる川端康成の「掌の小説」
(新潮文庫・平成元年改刷版)を読んでみた。

111篇が収録されているが、『有難う』『海』『夏の靴』
『港』の短編が脚本のヒントとなった元本と理解した。

それは殆どヒントに過ぎず、それ自体では映画はできない。
清水宏は、きわめて短い小編から構想を膨らませ、ストー
リを新たに考えたのだろう。

そして映像化した。
その清水宏の力量や畏るべし。


昭和10年代-今から80余年前の伊豆の漁村や農村。
その自然や風俗、世の風潮、景気を織り込んだオール
ロケーション映画だ。

身売りされる娘と母親、尊大な態度の髭の男、山師、
酌女など乗せて街道を走る乗り合い自動車。

乗合自動車に道を譲ってくれた人たちに、有り難うとあ
いさつをしながら通る青年運転士「アリガトウさん」。

道行く朝鮮人土工らの群れ、旅回りの役者一団。
そして、村の娘たちや小学生ら。

当時の不景気の中でつましく生きる人たちの姿を
くっきりと描いた好編。



観る者に、人が持つ哀しみと、美しい何かを感じさせ
る映画「有りがたうさん」。

映画 生きる 4K上映版 ☆☆☆☆☆

■ 1952年 東宝 143分 (TOHOシネマズ名古屋ベイシティ)
■ 監督 黒澤明
■ 脚本 黒澤明 橋本忍 小国英雄
■ 撮影 中井朝一
■ 美術 松山崇
■ 照明 森茂
■ 
主演 志村喬

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今もなお必見の傑作!


これまで映画館で3回、テレビ放映で1回、
DVDで2回と観た黒澤の「生きる」である。

久々にスクリーンで観ても、今もって心打
つ新鮮な映像作品であった。


脚本、撮影、録音、演出、演技のどれもが
今どきの映画とは比べるべくもない濃厚な
内容を有している。

不治の病、僅少の余命、死の恐怖。
周囲の者どもが囁く下世話な想像。
役人輩の保身根性、怠慢なる組織。

実験的な音、音楽の付け方。
巧みな回想場面の処理。
通夜の席での群像劇の巧さ。
俳優の鬼気迫る表情。


よくも敗戦7年後の昭和27年にこれほど
の熱気に満ちた長編を、と感心すること
しきり。

映画「生きる」は、時代の流れに埋もれる
ことを知らない、屹立する岩のような映画
である。



芸術は森からはじまる 県芸大キャンパスにて


芸術は森からはじまる
―面白い企画の展示会だ。
愛知県立芸術大学大学創立50周年を記念しての開催。

県芸大のキャンパスは大きな森の中にあり、片岡球子の絵画
がしばしば公開されるので、ときどき訪れる場所である。

今回は県芸大ゆかりの作家たちの森をモチーフにした刺激的な
作品があちこちに並べられていた。

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 奈良美智+森北伸  「森の中の大きな頭」


室内展示では、ヒガンバナ・ガラス管・アルコール
・水を使った福永恵美の「彼岸」 。

写真と見紛うほど精緻な油彩で沼や湿地帯を表現
した岡田修二の「水辺」シリーズ。

そのほか様々な作品群がどれもこれも楽しいものばかり。



 

DVD ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 ☆☆☆

■ 1975年 ATG  150分
■ 監督 新藤兼人
■ 製作 新藤兼人
■ 構成 新藤兼人
■ ナレーション 新藤兼人
■ 撮影 三宅義行
■ 出演 田中絹代  依田義賢
       成沢昌成  入江たか子ほか

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溝口健二 日本の映画監督
活動期間 1923年~1956年(満58歳没)

今年は没後60年にあたる。
WOWOWでは、彼の代表作を数本放映した。

それを観て、あらためて溝口健二の映画の
研ぎ澄まされた美しさに驚かされる思いだ。


さて、映画監督溝口健二とはどんな人だったのか。

溝口の没後19年経った1975年に、彼を敬愛し
てやまない新藤兼人は、当時の俳優や脚本家、
スタッフなど40余人にインタビュー。

それを長編ドキュメンタリー映画として完成。
映画「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」である。


関係者から語られる溝口の映画への妄執。
自己嫌悪と役者たちへの非情なまでの要求。

そして、実生活における妻との悲惨な関係。
語り手たちの証言で明らかになる監督の実像。


新藤はありのままの溝口健二を観客に伝える、
映画のために己と他者のすべてを注ぎ込む強烈な
個性を。

それ故にと言うべきか、残された溝口の作品群
は誰も真似ができぬ独自の輝きを放っている。