映画 ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ☆☆☆ 

■ IMPOSSIBLE ROGUE NATION 2015年 アメリカ 131分
          (TOHOシネマズ 名古屋ベイシティ)
■ 監督 クリストファー・マッカリー
■ 脚本 クリストファー・マッカリー
■ 撮影 ロバート・エルスウィット
■ 編集 エディ・ハミルトン
■ 出演 トム・クルーズ  レベッカ・ファーガソン
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これまで内心小馬鹿にしていたシリーズだったが、本
作を観て、少し考えを改めた。
トム・クルーズの体を張ったアクションぶりだけが身上
の映画には違いないが、危険感覚のマヒしたような演
技を生かした脚本は上手くできているし、女スパイも美
しく魅力的で、オートバイのカーチェイスのスピード感も
いい出来で驚いた。

これまでのシリーズにあったような陰惨さはなく、カッコ
付けるような気障さや嫌味も感じさせず、ただただアク
ションに徹している。とても好感が持てた。
こんなこと有りっこないストーリー。
こんなこと出来っこないトム・クルーズ。
ROGUE NATION(「ならず者国家」)という意味深長なタ
イトル。 
面白いスパイ映画だった。




映画 キングスマン ☆☆☆

■ KINGSMAN: THE SECRET SERVICE 2014年 イギリス 129分
                       (センチュリーシネマ)
■ 監督 マシュー・ヴォーン
■ 脚本 ジェーン・ゴールドマン マシュー・ヴォーン
■ 原作 マーク・ミラー デイヴ・ギボンズ
■ 編集 エディ・ハミルトン ジョン・ハリス
■ 出演 コリン・ファース タロン・エガートン マイケル・ケイン
 
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明快な筋立て。
粋でユーモアのあるセリフ。
あっと驚くシュールな演出。
はぎれのよい編集。

2時間をまったく退屈させない今時の娯楽映画
のお手本のような作品だ。

 

映画 GONIN サーガ ☆☆

■ 2015年 129分
■ 監督・脚本 石井隆
■ 
出演 東出昌大 桐谷健太 土屋アンナ

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復讐という名の決着劇。

彼らはみな自滅をひたすら望んでいるかのように
わめきちらしながら無謀な行動をひたすら最期ま
で続けていく。

凝りに凝ったバイオレンスシーン。
作り手たちの力点が、人物がどんなシーンでどう
死ぬのか、あるいはどう殺されるのかをリアルに
描くことであるのは明白である。
しかし、リアルであるはずなのに、あの不死身ぶ
りはどうなのだろう。

若手のGONIN。
第一作の主演たちに比べるとずいぶん見劣りす
るように思われた。


映画 夏をゆく人々 ☆☆☆

■ LE MERAVIGLIE(原題「不思議なもの」)
   2014年 イタリア/スイス/ドイツ 111分 (名演小劇場)

■ 監督・脚本 アリーチェ・ロルヴァケル
■ 撮影 エレーヌ・ルヴァール

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少女ジェルソミーナのゆれる思春期。

古代エトルリアの風景。

ミツバチたちの羽音と

仄暗い洞窟は

いつかは消えていくのだろうか。


  

DVD エレニの旅 ☆☆☆☆

■ TO LIVADI POU DAKRYZEI 2004年 
■ 製作国 フランス/ギリシャ/イタリア 170分 
■ 監督 テオ・アンゲロプロス
■ 脚本 テオ・アンゲロプロス トニーノ・グエッラ 
       ペトロス・マルカリス   ジョルジオ・シルヴァーニ 
■ 撮影 アンドレアス・シナノス
■ 美術 ヨルゴス・パッツァス  コスタス・ディミトリアディス 
■ 
音楽 エレニ・カラインドロウ 

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ロシア赤軍のオデッサ村への侵攻。
避難民となるエレニたちギリシャ人の放浪。
続くファシズムの波と戦争の惨禍。

テオ・アンゲロプロスはギリシャ人の悲劇を
壮大な映画として描く。
テオの、小説でもなく舞台劇でもない、映画だ
けが可能な表現方法で見せる哲学的才気。


映画  天空の蜂 ☆☆

■ 2015年 松竹 139分 (春日井コロナシネマ)
■ 監督 堤幸彦
■ 脚本 楠野一郎
■ 原作 東野圭吾
■ 撮影 唐沢悟
■ 音楽 リチャード・プリン
■ 出演 江口洋介 本木雅弘

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今日は東京の代々木公園で、安保法案と原発継続に
抗議する集会があったとテレビで報道されていた。
原子力発電所の課題は、今も、恐らくこれからも私たち
の頭上に重く覆い被さってくる。

映画は、「継続」「廃止」の両立場を程よく描いてゆく。
商業映画としては、それが妥当ともいえるし限界とも
いえる。

原発問題をサスペンスとして描くことの是非は問うまい。
ただ、サスペンス映画に不可欠な緊迫感を支えるリズム
とスピードはあったのか。
親子や夫婦関係を話の筋に入れないと日本映画ではない
とでも思っているような作り手たちのセンス。
説明的でディテールを繊細に捉えることをしないカメラワーク。
感情移入を観客に強いる過剰な伴奏の音楽。

残念ながら、原発サスペンス映画の傑作になり損なった…。

映画 ピエロがお前を嘲笑う ☆☆  

■ KEIN SYSTEM IST SICHER 2014年 ドイツ 106分
                        (センチュリー)
■ 監督 バラン・ボー・オダー
■ 脚本 バラン・ボー・オダー ヤンチェ・フリーセ
■ 撮影 ヤンチェ・フリーセ
■ 音楽 ミヒャエル・カム

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自白するハッカー青年の憂鬱な表情。
あれは演技?

しかし、彼らにとって会心のラストシーンでも
青年の表情は晴れていない。

ひょっとすると彼はハッキングを心から愉しんで
いなかったのではないか。

もっとスマートに心地よく欺してくれるような映画を
期待していたのだが…。


映画 黒衣の刺客 ☆☆☆

■ 原題「聶隱娘」 2015年 台湾 108分 (ピカデリー)
■ 監督 侯孝賢
■ 脚本 朱天文
■ 撮影 李屏賓
■ 音楽 林強
■ 出演 舒淇 田季安

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近年観た中で抜群の格調高い映像美を有した映画。

侯孝賢の作品群でも、画面の美しさとアクションシーン
の素晴らしさは、最良の一つだ。

このような映画に出会うのは、代え難い大きな喜び。
今後、侯孝賢はどんな世界をどう描くのか。
瑞々しさと美しさを湛えた侯孝賢の映画は期待する
ところ大である。


映画 僕たちの家に帰ろう ☆☆☆ 

■ 原題「家在水草丰茂的地方」 2014年 中国 103分
                  (名古屋シネマテーク)
■ 監督・脚本 リー・ルイジン李睿 
■ 撮影 リウ・ヨンホン
■ 音楽 ペイマン・ヤザニアン

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中国の急速な近代化。
少数の放牧民族は生活圏を侵され、転職を余議な
くされる運命なのか。

父母が住む水豊かにして青々と茂る草原が広がる
生まれた土地へ兄弟は旅する。

年の差から生じる兄、弟、それぞれの不満と反目。
旅の中で兄弟はさまざまな光景を目にする。
そして、二人はやがて目指す土地に立つ。


映画 婉という女 ☆☆

■ 1971年 ほるぷ映画 123分 (シネマスコーレ)
■ 監督 今井正
■ 原作 大原富枝
■ 脚本 鈴木尚之
■ 撮影 中尾駿一郎
■ 音楽 間宮芳生
■ 主演 岩下志麻

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監督今井正が今から44年前に発表した映画。

今井は、1950年から59年までにキネマ旬報ベストワン
作品賞を5回も受けている。
何とも驚くべき彼の当時の寵児ぶりだ。

それから時が流れて、「婉という女」は70年代の初めに作ら
れた。
本編は四歳から40年の幽閉生活を強いられた婉の数奇な
人生を描いている。
主演の岩下志麻が30歳。不屈だが生硬な生き方をする女
-娘時代だけでなく盛りをすぎた女を好演している。

作品はやや教条的で、登場人物の描き方が型に嵌っている
きらいが感じられる。
しかし、今井正は自分が長を務めるほるぷ映画で製作する誇
りと苦しさを感じながらも、東映の名脚本家である鈴木尚之の
脚本を得て、理不尽な世に敢然と異議を示す人間をどうしても
描きたかった。その思いが籠もった作品である。


映画 それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~ ☆☆☆☆ 

■ RETURN TO HOMS(原題「ホムスへの帰還」)
   2013年 シリア 89分 (名古屋シネマテーク)

■ 監督 タラール・デルキ
 
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2011年、シリア第三の都市ホムスで、政府に抗議
するプラカードを持った若者が射殺される。

たちまち平和的な抗議活動は政府によって封殺され
170人の市民が虐殺される。
危険を感じた多くの市民はホムスを離れる。

ホムスを愛する若者たちの苦悩が始まる。
集会やデモによる抗議活動はすでに無力だ。
武器を手にして戦うべきか。ならばどう戦うか。

そうした様を活写した生々しいドキュメンタリー映画である。

カメラは、数分前まで話をしていた青年が銃弾で血だらけに
なる瞬間を捉え、ほこりまみれになって転がる子供の死体
を映し、応戦するホムスの若者の血走った眼を見逃さない。

さすがに、映画館の大きなスクリーンでシリアの現実を見せ
られると、心穏やかな気分などはすっかり吹っ飛び、2015
年の日本に暮らす自分はどうしたらいいのだろうと思う。
現実にシリア難民がヨーロッパ各地に逃れているというのに…。

W杯サッカーのシリア戦が近づいている。
映画で見たバセットは有能なゴールキーパーとしてピッチに
立つことはないのだ。反体制派の戦士となった彼はいまも
どこかで生きているのだろうか。あるいは土に帰ったのだろ
うか…。
自分はテレビで中継されるシリア戦をどのような気分で観る
ことになるのだろう。

かくも、強烈な衝撃力を持つドキュメンタリー映画を見てしま
った。



映画 薩チャン 正ちゃん~戦後民主的独立プロ奮闘記~ ☆☆

■ 2015年 94分 (シネマスコーレ)
■ 監督 池田博穂 
■ 企画 池田博穂 
■ 脚本 池田博穂
 
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山本薩夫と今井正。
独立プロダクション草創期の監督。
そして、息長く現役を続けた二人。

その足跡を、「にっぽん泥棒物語」など懐かしい傑作フィ
ルムに、俳優やスタッフの証言を交えて辿るドキュメンタ
リー映画である。

二人とも左翼的ヒューマニストである故に大手映画会社
から追放される。
しかし、独立プロで貧乏の底を這いながらも、ヒット作、
話題作を放ち続けた。
大衆に受け入れられる映画作りの才覚は大したものだ。

このドキュメンタリー映画で初めて知ったのは、山本薩夫
が絵コンテを自身できっちり描くのに対し、今井正は一切
しないということだ。
そして、二人の共通点は、粘りに粘って納得するするまで
撮らないことだ。金が無くても、妥協はしない。妥協をしな
いから、鼻血も出なくなる。映画づくりの流儀は違っても
その気骨の強さは同じというところが興味深い。

でも、なぜ今「独立プロ奮闘記」なのだろう。
そして、なぜ「新藤兼人」は入らないのだろう。
ふと疑問に感じた。


映画 野火 ☆☆☆☆

■ 2014年 87分 (シネマスコーレ)
■ 監督 塚本晋也
■ 脚本 塚本晋也
■ 撮影 塚本晋也 林啓史
■ 編集 塚本晋也
■ 原作 大岡昇平

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戦場は幽鬼の集まり。

飢餓
血走る眼

機銃掃射の嵐
千切れる躰

地獄さえ戦場ほどではないのではないか。

大岡昇平は文章で記した。
「野火を見れば、必ずそこに人間を探しに行った私の
  秘密の願望は、そこにあったのかも知れなかった」と。

塚本晋也はその事を映像で描いた。
渾身の映像化を成した。