DVD 高地戦 ☆☆☆

■ THE FRONT LINE  2011年 韓国 133分
■ 監督 チャン・フン

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韓国の北朝鮮への複雑な感情を理解するのは容易ではない。
敵対国でありながら、同胞意識を完全には拭い去れない関係。
巨大国の代理戦争地、その緩衝地帯としての朝鮮半島。

映画で描かれる肉体の過激で凄惨な度合いは、その複雑な
感情に比例するかのように、止まるところを知らない。

チャン・フン監督の「映画は映画だ」(2008)は大好きな作品である。
「義兄弟」(2010)は、人間臭さが濃厚な娯楽映画の秀作だった。
本作は、自らの脚本によらない、前2作とは全く異質な題材を取り上げた戦争映画。
描き方が独特の濃さを持つチャン監督らしさは散見される。しかし、話の筋は暗澹で凄惨である。
「クイック!!」 (2011)や「ハロー!?ゴースト」(2010)で好演したコ・チャンソク
のキャラクターが、陰惨さをすこしは和らげるてはいるのだが…。

次作は監督のオリジナル脚本での映画を観てみたい。       

             
 

映画 レイルウェイ 運命の旅路 ☆☆☆★ 

■ The Railway Man 2013年 オーストラリア/イギリス 116分 (センチュリーシネマ)
■ 監督 ジョナサン・テブリッキー
■ 原作 エリック・ローマクス 「泰緬鉄道 癒される時を求めて」
■ 出演 コリン・ファース ニコール・キッドマン

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「この映画は真実に基づいた物語」とタイトルされる。
原作者で、映画の主人公のエリックは過去にずぅと苛まれている。
泰緬鉄道での生き地獄に。
             *
この映画を観ると
デヴィッド・リーン監督の「戦場にかける橋」が
一種の英雄譚映画に過ぎなかったのではあるまいか
とさえ思われてくる。
過酷という言葉では到底言い尽くせぬ惨状が
本作では描かれている。
             *
当地における捕虜の多くを占めた
イギリス兵士、オーストラリア兵士たち。
その母国のスタッフらが真実の映画を
と願う思いの程は想像以上だろう。
             *
この映画は真実に迫るドラマとしての価値が大きい。
だから、邦題は「泰緬鉄道」が相応しいのではないか。




映画 そこのみにて光輝く ☆☆☆☆☆

■ 2013年 120分 (ミリオン座)
■ 監督 呉美保
■ 原作 佐藤泰志
■ 脚本 高田亮
■ 撮影 近藤龍人
■ 音楽 田中拓人
■ 出演 綾野剛  池脇千鶴  菅田将暉 

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今年の日本映画の大きな収穫となる作品

地の底から聞こえてくるような叫びをもつ傑作

綾野 池脇 菅田の揺さぶられるような演技

そして 佐藤泰志



DVD マリー・アントワネットに別れをつげて ☆☆☆

■ LES ADIEUX A LA REINE 2012年 フランス/スペイン 100分
■ 監督 ブノア・ジャゴー
■ 原作 シャンタル・トマ
■ 脚本 ジル・トーラン  ブノア・ジャゴー
■ 美術: カーチャ・ヴィシュコフ 
■ 衣装: クリスティアン・ガスク  ヴァレリ・ランシュ

■ 出演 レア・セドゥ  ダイアン・クルーガー

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レア・セドゥが演じるシドニーの表情、態度からは
王妃アントワネットへの、身を捩るほどの熱い憧憬
や献身の感情といったものがあまり感じられなかっ
たのは、なぜ?
              *
興味深かったのは
バスティーユの暴動を知った王族諸侯の狼狽ぶり。
286名のギロチンリストが出回ったからだ。
そして、王妃が恋情を抱くポリニャック夫人の俗人ぶり。
高貴で絢爛な衣装の下に輝く美しい肢体を持ちながら
物欲しげな目と冷酷な心を有する女性とは。
              *
本物のベルサイユ宮殿で撮影されたとのことだが
なるほど美術や衣装は出色の作品とはいえる。

映画 ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! ☆☆☆☆ 

■ THE WORLD'S END 2013年 イギリス 109分(センチュリーシネマ)
■ 監督 エドガー・ライト
■ 脚本 サイモン・ペッグ エドガー・ライト
■ 出演 サイモン・ペッグ ニック・フロスト 
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お待たせしました。
エドガー・パワー炸裂
エドガー・ワールド満載の映画
         *
男たちのバカな友情を軸に
くだらなく自由で
過激なギャグとアクションが展開される。
         *
こんな映画を観ることの、たまらない幸福感。


  

映画 グランドピアノ 狙われた黒鍵 ☆☆☆☆ 

■ GRAND PIANO 2013年 スペイン/アメリカ 91分 (109シネマズ名古屋)
■ 監督 エウヘニオ・ミラ
■ 脚本 デイミアン・チャゼル 
■ 撮影 ウナクス・メンディア
■ 音楽 ビクトル・レイェス

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緊張感にあふれた脚本だ。
超絶技巧を要するピアノ曲。
観客が注目するステージ上で、1箇所でも弾き誤ると
スナイパーの銃口が火を噴く。
いかに弾き終えるか。 
             *
音楽によって映画は動き始め、やがて加速し、疾走する。
演奏を使った特異なサスペンス映画。 
91分を文句なしに愉しめる。 

 

映画 グロリアの青春 ☆☆☆☆

■ GLORIA 2013年 スペイン/チリ 109分 (名演小劇場)
■ 監督 セバスティアン・レリオ
■ 脚本 セバスティアン・レリオ ゴンサロ・マサ
■ 出演 パウリーナ・ガルシア  セルヒオ・エルナンデス    

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どきっとする場面が全編にあふれ、観る者を圧倒し続ける。
            *
例えば
グロリアが家族をロドルフォに紹介するシークエンス。
このシーンで繰り広げられる家族という名の得体の知れない怖さ。
惻々と迫る、家族の業のどうしようも無さ。その淵の深さ。
この場面だけでも、わたしたちは息をのまずにはおかない。
            *
家族のなかで生きることのどうしようも無さを
映画「グロリア」は、生々しいタッチで最後まで描き切るのだ。
            *
人間という生き物のどうしようもない部分を
はからずものぞき見てしまった…
否応なく見せられてしまった…
そんな映画だった。
             
   

映画 ドストエフスキーと愛に生きる ☆☆☆☆★

 DIE FRAU MIT DEN 5 ELEFANTEN 2009年
            スイス/ドイツ 93分 (名演小劇場) 
■ 監督 ヴァディム・イェンドレイコ
■ 出演 スヴェトラーナ・ガイヤー

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「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「白痴」「未成年」
そして「悪霊」。
ドストエフスキーが残した五つの象のような著書を
ドイツ語に翻訳したスヴェトラーナ。
            *
言語と思索。
語感と深考。
原本への憧憬。
スヴェトラーナの美しい皺。
            *
翻訳家とは何か。
その一つの答えがここにある。