DVD マークスの山(TV版) ☆☆☆

■ 放映2010年  製作 WOWOW  全5話 約270分

■ 監督 水谷俊之 鈴木浩介

■ 原作 高村薫 

■ 脚本 前川洋一

■ 出演 上川隆也(合田雄一郎) 高良健吾(水沢裕之) 戸田菜穂(高木真知子)

 

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映画版「マークスの山」で物足りなさを感じていたので、長尺のTV版DVDを観た。

小説の面白さに近いのは、TV版の方だった。

ある程度の長さが、小説「マークスの山」を映像化するには不可欠だからだろう。

では、TV版で満足できたか、と問われれば、答えは否。

合田役が、どうしてもハマらないのだ。

この小説のよさは合田の人物像にある。

相応しいのは、映画の中井貴一でもなく、上川も違う。

この役にハマるのは、誰だろう?

それを見つけ出さないかぎり、映像化は難しい。

「マークスの山」はそういう小説なのだ。

 

 

 

映画 ハーバー・クライシス ☆☆☆☆ 

■ 痞子英雄 首部曲 全面開戦 台湾 128分 (イオンシネマ・ワンダー)

■ 監督・脚本 ツァイ・ユエシュン

■ 主演 マーク・チャオ  

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スクリーンを所狭しと飛び跳ねるアクション満載の映画が現れた。

やや暴走する不死身の刑事が活躍する、まさに台湾版「ダイハード」だ。

冒頭の危険なカーアクション場面もじつにテンポがよく、すぐにスクリーン

に引き込まれる。

きっとアクション監督に才能があるのだろう。

また、脚本にもいくつか工夫が感じられ、特に三つ巴、四つ巴の銃撃シー

ンは、おっ!と声を出すほど新鮮な設定だった。

さらに、主人公を演じるマーク・チャオが、ダイハードのブルース・ウィリスより

断然若いので、活劇シーンの動きの切れが格段によい。

飛行機が、ハーバータウンの高層ビルにあやうくぶつかりそうになる場面では

おお、よくぞやってくれた!と叫びたいほどだった。

台湾製の単純明快なアクション映画が、これほどとは思わなかった。

素晴らしい!

   

映画 俺の笛を聞け ☆☆☆☆★

■ EU CAND VREAU SA FLUIER, FLUIER 2010年製作

      ルーマニア/スウェーデン/ドイツ  94分 (シネマスコーレ)

■ 監督・脚本 フロリン・セルバン

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ナイーブさと、力強さをもった傑作!

主人公の青年シルヴィウの人物造型が素晴らしい!

多くの人にみてほしい映画だ。

 

映画 天地明察 ☆☆★

■ 141分 (ミッドランドスクエアシネマ)

■ 監督 滝田洋二郎

■ 原作 冲方丁

■ 脚本 加藤正人

       滝田洋二郎 

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改暦に生涯を賭けた男の物語にしては、冗長な映画になっている。

主人公の安井算哲の、天才的なインスピレーションや

膨大な天体観察の労苦が、全く伝わって来ない。

              *

ロケ地やら、大道具やら、CG処理やら、壮大な音楽やらに力点をおくと

作品の中身が軽くなり、やがて空疎になる。

そんな典型のような日本映画だ。

ほんとうに残念である。           

 

DVD アリス・クリードの失踪 ☆☆☆★

■ THE DISAPPEARANCE OF ALICE CREED 2009年製作 イギリス 101分

■ 監督・脚本 J・ブレイクソン

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登場人物は、全編を通してわずか3人。

富豪の娘アリス、そして誘拐犯の男ふたり。

これで1時間30分余の映画をもたせたのは、すぐれた脚本だ。

男が刑務所で知り合った仲というのが、面白いポイントになっている。

また、アリス役のジェマ・アータートンがなかなかよい。

日本の昔の女優、沖山秀子に似た風貌で、

金持ちの娘らしからぬ下品さと、金持ちの娘らしいふてぶてしさとを

合わせ持った女を演じている。

                *  

オリジナルの脚本で、この長編第一作を撮った監督J・ブレイクソン。

今後、どんな作品を見せるのだろう。

楽しみである。              

 

DVD ボックス! ☆☆☆

■ 2010年製作 126分

■ 監督 李闘士男

■ 原作 百田尚樹

■ 脚本 鈴木謙一

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市原隼人のカブにも、高良健吾のユウキにも、

人物の存在としてのリアリティが感じられないのが、この映画の弱点だ。

               *

その原因は、たぶん、ミスキャスト。

市原には

天才ボクサーの素質、特にインスピレーションを有する若者の

大胆で繊細な部分を表現する演技力は未だ無い。

高良には

努力によってボクサーの体力と技術を身に付けたと思わせる

肉体が備わっていない。あれでは、新人戦優勝などできない。

明らかにリアリティのない、キャスティングミスだった。

一方、筧利夫の沢木先生には存在感があり、なかなか面白かったが…。

               * 

若者向けの人気俳優を使った人気小説の映画化は難しい。

この映画をみると、つくづくそう思う。

 

 

DVD  アンストッパブル ☆☆☆☆

■ UNSTOPPABLE 2010年製作 アメリカ 99分 

■ 監督 トニー・スコット

■ 主演 デンゼル・ワシントン

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列車の緊迫した疾走感を見事に演出した良質のパニック映画。

                  *

無人暴走列車を、鉄道員のデンゼルなら、きっと停めることが出来るだろう。

そう分かっていても、話に引き込まれ、画面から目が離せなくなる。

いかにして停めるか、この一点に絞ったストレートな脚本。

現場からの生中継を思わせるドキュメンタリータッチの巧みな撮影。

細かくカットバックを積み重ねる歯切れのよい編集。

集団場面を見事に演出するトニー・スコットの監督術。

                 *  

そして、極め付けは、エンドロール直前のインサートカット。

列車を停めるために重傷を負った兵士のストップモーションにかぶる文字。

「ライアン・スコット 無事回復」。

暴走の原因となったミスをした鉄道員デューイのカットにかぶる文字。

「デューイは ファストフード業界へ」。

何という心憎いほどのコメントセンス!

るでスポーツのような爽快感をもつ映画だった。

 

DVD  ツーリスト ☆☆☆

■ THE TOURIST 2010年製作 アメリカ/フランス 103分

■ 監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 

■ 主演 アンジェリーナ・ジョリー ジョニー・デップ

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水の都ヴェネチアを舞台した恋愛コメディ。

または、サスペンス風味のピカレスクストーリーとも云えるか。

主演は、ハリウッドの個性派俳優のジョリーとデップ。

監督は「善き人のためのソナタ」のドナースマルク。 

ラストも洒落たセンスを感じさせ、言わば万人向けの娯楽作だ。

たまには、セクシーなスター二人が活躍する映画を見るのも悪くない。

映画 鍵泥棒のメソッド ☆☆☆★ 

■ 128分 (MOVIX三好)

■ 監督・脚本 内田けんじ

■ 出演 堺雅人 香川照之

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         主役は香川照之!?

             *

内田けんじの映画は、作劇術の面白さが身上だ。

劇場公開第一作「運命じゃない人」をみたときの衝撃は今も忘れがたい。

そして、第三作目の「鍵泥棒のメソッド」。

作劇の面白さもさることながら、記憶喪失の殺し屋を演じる香川照之の

怪演ぶりが堪能できる楽しい映画になっている。

自信まで失ったような情けない目つき。反面、意志強固な眉間のしわ。

思わぬ悲劇?喜劇?の渦中の男の複雑な心境を好演している。

そして、記憶が戻った香川が、人が刺し殺されるときの動きを貧乏役者

の堺雅人にレクチャーする場面では、思わず声を出して笑ってしまった。

            *

照之よ、歌舞伎世界に身を置けども、映画の水な忘れそ。

汝であらずば、ならぬ役割なお映画には在り。

そんな声をかけたくなる怪優香川の映画だった。

 

 

映画 ムースの隠遁 ☆☆☆☆ 

■ LE REFUGE 2009年製作 フランス 88分 (シネマスコーレ)

■ 監督 フランソワ・オゾン

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ドラッグ注射を首筋に突き刺すシーンや

妊娠中の女優の膨らんだ腹部のカットなど

生々しさが印象的な映画。

と思いきや、後半は俄然、聖的な色彩さえ帯びてくる。

死んだ恋人の弟が、生い立ちを話し始めるところから

映画は面白くなってくるのだ。

これ以上は、未見の人のために書けない。

ラストがかなり怖くて、素晴らしい映画。

オゾン監督が作った「まぼろし」も、そう云えば怖かったなァ。


 

映画 気狂いピエロの決闘 ☆☆☆★ 

■ BALADA TRISTE DE TROMPETA 2010年製作

   スペイン・フランス 107分          (シネマスコーレ)  

■ 監督・脚本 アレックス・デ・ラ・イグレシア

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狂乱の映像が展開する悪夢のような映画である。

             *

泣き虫ピエロのハビエルが、セルジオの暴力に恐れつつも

美女ナタリオにのめり込んでいくシークエンスは秀逸だ。

肉体を張った出演者たちの演技。

加虐的でケレン味たっぷりな監督の演出。

観客はイグレシア・ワールドに引きずり込まれていく。

             *

原題は「悲しいトランペットバラード」の意のようだが、

邦題の「気狂いピエロの決闘」の方が断然よい。

ただし、いずれにしても、観た後は、やや重く暗い気分になる。

それが、この映画のよさである。

 

映画 時の重なる女 ☆☆☆★

■ LA DOPPIA ORA 2009年製作 イタリア 95分 (シネマスコーレ)

■ 監督・脚本  ジュゼッペ・カポトンディ

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映画の半ばを過ぎても、話の展開が読めない。

どんな映画なのだろうか。観客は戸惑う。

謎に満ちたサスペンス映画なのか。

混濁した意識をもとにした異色のスリラーなのか。

              *

この映画がすぐれているのは、事件の真相が明らかになったあとでも、

サスペンスフルなさざ波と、リリカルな余韻を観客が味わえることだ。

計画性と、偶発性…。

深層の心理と、浮上する意識…。

愛する男と、愛したい男…。

ラストに流れる音楽の、弾むようなリズムさえ、深い余韻を残す映画。

 


   

DVD クヒオ大佐 ☆☆☆★

■ 2009年製作 112分 

■ 監督 吉田大八     ■ 原作 吉田和正

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映画の冒頭に字幕が出る。

「これは実在の人物を モデルにした創作である」

その通りに映画は、結婚詐偽男のドキュメンタリーではなく

あくまでもコメディタッチの創作ドラマとして進行する。

主役は、実在の竹内某と全く印象が異なる爽やか系俳優、堺雅人。

かくして、映画は欺すことの後ろめたさや、被害の深刻さを感じさせずに

だまし欺される男と女の、虚々実々の世界に焦点を当てて面白く描く。

特に、色男堺雅人の気障なセリフや、事が露見しそうになる狼狽ぶり、

欺された後の女たちの決着の仕方は映画の見所である。

そうした演出はある程度成功している、と言えるだろう。

しかし、ずっと気になるのだ。

実在の竹内某なる人物は、実際どのように女を欺したのか。

女たちは本当に気付かなかったのか。

つまりは、後味はよくない映画になるかも知れないが

シリアス(実録)版「クヒオ大佐」が観たいものだ!

そういう気にさせる映画だった。

黒部五郎岳 消しゴムはんこ

深田百名山の踏破をめざしているKさんから、

黒部五郎岳に登頂しました、との便りが届きました。

76座目だそうです。

同岳は、私が1992年の夏に登った大好きな山のひとつ。

昔日の単独行を、きのうのことのように思い出しながら、

Kさんの登頂を祝います。

 Web

   ( 30 × 60 ミリ 消しゴム )

映画 ニッポンの嘘~報道写真家 福島菊次郎90歳~ ☆☆☆☆

■ 2012年製作 114分 (名古屋シネマテーク)

■ 監督 長谷川三郎

■ 撮影 山崎裕 

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気骨ある人間の迫力が、スクリーンから生き生きと伝わってくる。

菊次郎の撮ったモノクロ報道写真の迫力!

その被写体として取り上げられた人間たちの生の迫力!

そして、菊次郎の持つ矜恃の迫力!

ニッポンの偽善を

報道写真で

痛烈に告発し続ける

福島菊次郎の飾らない生き方の迫力に圧倒される。

    

 

DVD リバティ・バランスを射った男 ☆☆☆

■ THE MAN WHO SHOT LIBERTY VALANCE 

            1962年製作 アメリカ 123分

■ 監督 ジョン・フォード

■ 出演 ジェームズ・スチュワート ジョン・ウェイン ヴェラ・マイルズ  

       リー・マーヴィン リー・ヴァン・クリーフ

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悪役のリバティ・バランスを演じるリー・マーヴィンが素晴らしい。

いかにも無法者といった臭いを発散し、暴れまくる目が怖い。

マーヴィン38歳、脂がのりきっている。

クールな乾分役がリー・ヴァン・クリーフ。これまた適役で、

暴力が全てというような冷徹な顔つきをしている。

このふたりの俳優が、無法地帯であった西部を体現している。

               *

しかし、映画の出来は、全体としては平凡なものに留まる。

手慣れた演出、脇役の演技の見事さは悪くないが、

主役のスチュワートと、ウェインがあまりにも歳をとりすぎている。

これは、この映画のほとんど致命的な弱点だ。

ヴェラに結婚を申し込むという設定には、あまりにも無理があり過ぎる。

ちなみに当時、J・スチュワート54歳。J・ウェイン55歳である。

洋の東西を問わず、商業映画にはこうした起用は往々にしてあるが、

役年齢に相応しくない俳優を使った、映画の無残を感じてしまった次第。