DVD  ハッピー・ゴー・ラッキー ☆☆☆☆★

■ HAPPY-GO-LUCKY 2007年製作 イギリス 118分

■ 監督・脚本  マイク・リー 

■ 出演 サリー・ホーキンス エディ・マーサン 

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リー監督の映画は、いつも魅力にあふれている。

この作品もそうだ。

リー映画に登場するのは、ごく普通の人たち。

屈託なさそうに生きている人も

悲観的に考えがちな人も

口数の少ない人も

暴力的な行動をする人も

何かを我慢している表情の人も

それぞれの感情があり

それなりの理性があり

守ろうとしている生き方がある

それをリー監督は静かに描くのだ。

決して同情心ではなく、共感を持ちながら…。

DVD 恐喝(ゆすり) ☆☆☆★

■ BLACKMAIL 劇場未公開 1929年製作 イギリス 82分

■ 監督 アルフレッド・ヒッチコック

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あるデータベースによると、「恐喝」はヒッチコック監督の10本目の映画だそうだ。

彼は1899年生れなので、29才か30才でこれを作ったことになる。

ストーリーは、正当防衛で殺人を犯した恋人と刑事が、ある男から恐喝されるという

話自体の出来は平凡で、残念ながら☆は3.5止まり。

                   *

しかし、後年花開くヒッチコックワールドの片鱗が随所に見られ、サスペンス・テク

ニックのすばらしさという面では、さすがヒッチコック映画である。

写真は、大英博物館の中に逃げ込んだ恐喝者が、ロープを伝って降りるシーン。

強大なモニュメントを使うことで、サスペンスの視覚的効果を高めるヒッチコックお

得意の手法は、すでにこの頃から使われていたことが判り、とても興味深い。

ロープの垂直方向の構図と動きは、落下の不安を連想させ、見る者の緊張を高める。

さらに、壁に写った人物の大きな影がゆらり、ゆらりとするので、視覚的サスペンスは

いっそう高められることになる。

ヒッチコックは、じつに、うまい。

映画の製作年は古いが、生理的心理的不安をたくみに見せるヒッチコックの

異才は、今もなお新しいままである。 

DVD 主婦マリーがしたこと ☆☆☆☆

■ UNE AFFAIRE DE FEMMES 1988年製作 フランス 108分

■ 監督 クロード・シャブロル 

■ 撮影 ジャン・ラビエ

■ 主演 イザベル・ユペール

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クロード・シャブロルは好きな監督のひとりだ。

原題を直訳すると「この女の場合」ということになるのだろうか。

第二次世界大戦下のフランスで、違法行為を行った主婦マリーが

ギロチン刑になるまでの話。

                 *

抑えられない欲望に身を委ねる主婦のI・ユペールは、堕落の匂い

と狂気の凄みを、全身から発散する演技で、とてもすばらしい。

撮影もいい。カメラワークや、カットの切り替えが上手く、静かな緊張

感を巧みつくり出す。カメラマンはジャン・ラビエという人で、アニエス

・ヴァルダ監督の「幸福(しあわせ)」のカメラマンだそうだ。

                 *

名古屋シネマテークで6月に、シャブロル監督の「刑事ベラミー」が公開予定とか。

とても、楽しみ。

DVD キー・ラーゴ ☆☆☆

■ KEY LARGO 1948年製作 アメリカ 101分

■ 監督 ジョン・ヒューストン

■ 出演 ハンフリー・ボガート

       ローレン・バコール

           エドワード・G・ロビンソン

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フロリダ半島の島キー・ラーゴにあるホテルの一夜を描いた映画。

主な登場人物として、ボガートの復員将校、バコールの未亡人、・ロビンソンの

ギャングなどを配し、それに先住民の脱走、それを追う警官、ギャングの取引な

どを絡ませた話である。

                       *

ギャングたちが登場する映画としてはサスペンス感が薄く、クールな恋を描く映画

としては、バコールの魅力もほとんど発揮されていない。

ただ、苦虫を噛みつぶしたようなボギーの表情だけが印象に残る。

役者が揃い、ヒューストンが監督した映画ということで期待したのだが、出来はそれ

以上のものではなかった。

DVD あしたのパスタはアルデンテ ☆☆☆

■ MINE VAGANTI(原題「浮遊機雷」) イタリア 2011年劇場公開 113分

■ 監督 フェルザン・オズペテク

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原題があまりにも冷笑的なので、日本公開ではさまざまな思惑によって「あしたの…ア

ルデンテ(堅茹で状態)」の題名に刷り替えられてしまったのだろう。

しかし、「固茹でパスタ状態」というのも、意味深長で十分にシニカルな題名ではある。

                      *

それはさておき、息子の同性愛告白によって引き起こされる家族のドギマギさを、喜劇

タッチで描き、いかにもイタリア風な映画にそつなく仕上げている。退屈はしない。

おばあちゃんの結婚についてのインサートシーンが数回あるのだが、それは何を表し

ているのだろう。いろいろと空想はできるのだが、最後まで曖昧のままだった。

その点さえ気にしなければ、まずまず楽しめる映画だ。

映画 別離 ☆☆☆☆

■ JODAEIYE NADER AZ SIMIN (ナデルとシミンの別離) イラン 123分 (名演小劇場)

■ 監督・脚本  アスガー・ファルハディ

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脚本が素晴らしい。

登場人物の胸の底にあるエゴや保身が露わになる様を、あざやかに描いている。

突発的な事故をきっかけに、嘘や言い訳を交えた自己主張の応酬が拡大してい

く作劇法は、前作「彼女が消えた海辺」と全く同じものだ。

しかし、本作の方が、親の介護や、失業、離婚といった現実的な問題が複雑に絡

んでいる分、切実感をもって観る者に重く伝わってくる。

                    *

人間の行動や言質に、意識的か、無意識かを問わず入り込む打算や虚偽。

そして、それが招く不幸。

しかし、今さらやめることのできない主張。

ますます抜け出せなくなる不幸の深い淵。

ラストシーンのあの長さは、その淵の底知れない深さのように、私には思えた。

DVD 組織 ☆☆☆☆

■ THE OUTFIT アメリカ 1973年製作 105分

■ 監督 ジョン・フリン

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B級映画の傑作。

ロバート・デュヴァルが、昔の仲間のジョー・ドン・ベイカーと共に、犯罪組織に

挑んでいく話で、刑務所帰りの男を好演している。

組織に兄を殺された決着を何としてもつける。そのために、組織の金を強盗する。

冷静と激情を秘めたB・デュヴァルの表情は寂しげだが、J・D・ベイカーとの会話の

なかで見せるかすかな笑顔がたまらなくいい。

ほこりっぽいガソリンスタンド。

片田舎の犬。

安モーテルのビール。

男を誘う亭主もちの女。

非情で忠実な組織の殺し屋。

金庫の中のドル紙幣。

火を噴く拳銃。

組織の金を強奪する場面は不意を突いてスリリングだし、殺し屋に狙われるシーン

の緊張感の盛り上げ方も上手い。J・フリンの演出力はなかなかのものだ。

近年の映画に見られるような目まぐるしいカット割りや、大げさなグローズアップで

思わず反応させられる映画ではない。ストーリーと俳優の演技から醸し出される

犯罪映画の面白味を味わうことのできる映画なのだ。

30年以上昔に映画館でみたJ・フリンの映画は、「ローリング・サンダー」だ。

見終わって受けた強い印象は(なんと直情的で凄いバイオレンス映画か)だった。

しかし、今日DVDで観た「組織」は違う。(なんと味わいの深い報復の映画か)だ。

監督J・フリンやD・シーゲルたちが作った70年代アメリカB級映画には、いま観て

も秀作あり、怪作あり、そしてなかには「組織」のような傑作ありで、ずいぶん楽し

むことができる。

DVD 戦火の中へ ☆☆☆☆

■ 포화 속으로(砲火の中へ) 韓国 2011年劇場公開 121分

■ 監督 イ・ジェハン

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実話をもとにして作られた映画の持つ迫力と、重みに圧倒される。

キャラクターなどは脚色されているだろうが、ソ連や中国からの軍事支援と

19万8000人の兵力を持った北朝鮮の猛攻が、兵力10万6000人の韓国領土

に戦死者の山を築いていったのは、たぶん本当なのだろう。

映画は、前線死守の命令を受けた71名の学徒たちの戦闘とその悲惨を描く。

訓練を受けないままに銃を手にする不安

兵数や装備も知らされていない敵への恐怖

銃創でえぐられた肉体の耐え難い痛苦

映画はそうした血みどろの状況を鮮烈な映像で再現している。

エンドタイトルが流れるなか、元学徒兵の生存者が語る言葉は、重い。

 

映画 ビースト・ストーカー/証人 ☆☆☆☆★

■ BEAST STALKER/証人 2008年 香港 109分(センチュリーシネマ)

■ 監督 ダンテ・ラム

■ 出演 ニコラス・ツェー   ニック・チョン 

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香港ノアールの傑作!

暗雑でエネルギッシュな香港の町での犯罪を、隠れる者と追う者とを

真正面にすえ、疾走感あふれる撮影で、見事に描いている。

建ち並ぶ香港島の雑居ビル

そこで突然始まる銃撃戦

逃げ惑う大勢の通行人や買い物客たち

全速力で逃走する乗用車 追う捜査車両

そして、交差点での激突 次々にクラッシュする車と車と車

物語の悲劇はここから始まる。

このクラッシュシーンの撮り方と、扱い方が実に上手い。

監督ダンテ・ラムは、ジョニー・トーとは異なる新たな才能を、この映画で発揮している。

                       *                                                          

役者もいい。

とくに殺し請負者のニック・チョンが素晴らしい。

ほとんど視力を失いかけている濁った片目を持ち、

半身不随の妻を世話しながら、殺しの便利屋を続ける男。

その内に在る凄みと哀しみを見事に体現していて、圧巻である。

「ブレーキング・ニュース」「エレクション」「エグザイル」などでも忘れ

がたい印象的を残したが、いよいよ役者としての充実期を迎えつつ

あるのかも知れない。

映画 わが母の記 ☆☆☆★

■ わが母の記 118分 (MOVIX三好)

■ 監督・脚本  原田眞人

■ 原作 井上靖

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丁寧につくり上げたことが画面からひしひしと伝わってくる映画で、ある種の格調の高

さを感じさせる大作と云える。

俳優も役所広司、樹木希林、宮崎あおいの三人をそろえ、その演技は見応えがある。

しかし、映画全体に抑制の効かない湿っぽさを覚えて、正直閉口した。

また、作り手の「感動させよう症候」が見え隠れしているとも感じた。

かっての原田眞人作品が懐かしい。

ビデオ「復讐の天使 KAMIKAZE TAXI」には、怖いほどの熱気があったし、

木村一八主演の「タフ」シリーズの4作の狂気にも、思わず引き込まれたものだった。

映画は、大作になればなるほど、面白味が失われていくのであろうか。     

映画 ポテチ ☆☆☆☆

■ ポテチ 68分 (MOVIX三好)

■ 監督・脚本  中村義洋

■ 原作 伊坂幸太郎

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「ポテチ」 なんと軽いタイトル。

上映時間68分 なんと短いこと。

同じ日に観たので、「わが母の記」と比べてしまうのは、どうも仕方がない。

こちらも原作物で、脚本は監督が書いている点でも同じ。

さらに、偶然なのだが、同じ「母への想い」がテーマなのだ。

しかし、想いの種類と、思いの仕方が全く違う。

映画的な手法も、上映時間も、大きく異なる。

伊坂小説が原作のため、内容を詳しく書くことはルール違反になるので止すが

「あっ」と思う度合いは、「わが母の記」より「ポテチ」のほうが断然大きかった。

「ポテチ」などという軽いタイトルの、わずか68分の映画だが侮ることはできない。

大嘘の映画なのだが、こつんと残るものがある「ポテチ」だった。

Kさん夫婦のはんこ

 

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職場の先輩だった知人のKさん夫婦は、音楽鑑賞が共通の趣味。

2年前にワルシャワで開催されたショパン生誕二百年記念コンサートに

家族で出かけ、ブーニンのピアノ演奏に大感激。

以前から紀行文を同人誌に発表しているKさんは、ワルシャワのほか 

にも巡ったクラクフやウィーンでの演奏会もあわせ、「欧州音楽紀行」

として文章に纏めんと熱筆を奮い、ついに脱稿。あとは発行を待つのみ。

それを記念し、Kさんへの消しゴムはんこを作った次第です。

映画 ル・アーヴルの靴みがき ☆☆☆☆

■ LE HAVRE フィンランド/ドイツ/フランス 93分 (名古屋シネマテーク)

■ 監督・脚本 アキ・カウリスマキ

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カウリスマキ映画の魅力は、登場人物が持つ独特の存在感である。

感情をあからさまに顕すことのない表情や

物思いにふけるように虚空を見上げる目や

時間が止まったかのような立ち姿が

不思議な滋味を醸し出し、カウリスマキの世界をつくってゆく。

それは、移民少年をかくまう話であっても、レストランの開業の物語であっても、

変わりはしない。

カウリスマキのファンとして、印象的だったのは、撮影色彩の美しさだった。

撮影はティモ・サルミネンという人で、ずっとカウリスマキの作品を撮ってきたという。

主人公夫婦の室内の色彩センスや コンテナが積まれた倉庫内の沈んだ青の美しさ。

この作品で、映画の味わいをかみしめる新たな愉しみが、またひとつ加わったようだ。

DVD 深夜の告白 ☆☆☆☆★

■ DOUBLE INDEMNITY アメリカ 1944年製作 106分

■ 監督 ビリー・ワイルダー

■ 原作 ジェームズ・ケイン

■ 脚本 ビリー・ワイルダー  レイモンド・チャンドラー

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保険金目当ての夫殺しを実行する男と女の話。

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の作家J・ケインが書いた小説を B・ワイルダーと

R・チャンドラーが脚色したワイルダー映画とくれば、面白くないはずがない。

犯行後の男女それぞれの心理を見事に描き分けた脚本の巧みさ。

ちらりと見せるスリルを幾つも重ね合わせる演出の心憎さ。

男の同僚で保険捜査係役のE・G・ロビンソンの使い方の上手さ。

ビリーおじさんの映画には、いつも参ってしまう。

 

 

入れもの考 箱

人に贈る消しゴムはんこの入れものは、どんな形や大きさの箱がよいのだろうか。

素材のゴムの厚みは10ミリ。

したがって、空箱の厚みは、(印がガサつかず、かつ余裕がある)11ミリが最適。

1 既製品の箱の利用 

①ホチキス針の空箱 (マックス社№10-1M 内側の縦27×横49×厚さ10㍉) 

 引き出し形なので、出し入れに便利。厚みはやや窮屈。入らないことはない。利用可。

②meijiチェルシーの空箱(60×100×10㍉)

 引き出し形。厚みはホチキス針箱と同じ。面積が大きい印向き。利用可。

1 11 

③meijiバナナチョコの空箱(45×110×11㍉)

 厚みは最適。引き出し形でもなく、蓋付き形でもないので、使いづらい点が惜しい。

④厚み15㍉の箱

・明治塩バターキャラメルの空箱

引き出し形で使い易い。通称プチプチ緩衝材を下に敷けばガサつかない。利用適。

4

・マルカワのフーセンガムの空き箱 

3 

引き出し形でもなく、蓋付き形でもない。縦横とも30㍉と小さいので印が出しやすい。

利用適。私はこれを使うことが多かった。

・マッチ箱  厚み15㍉。引き出し形。しかも頑丈。これが私の知るかぎり最適の箱だ。

        外側を色紙などで被い、陰影など上に貼り付けるのも容易に出来る。

8 

      ただし問題点がある。日常生活でマッチを使うことなどめったにないため、

      それを捨てることになる。第一危険であるし、ムダでもある。

      仕方がないので、マッチ箱と同じくらい丈夫で、引き出しやすい物を自分

      でつくることにした。

⑤その他 

・meijiマーブル   厚み16㍉超。細長い形で、印を取り出しにくい。

 10   でも、パッケージデザインが好きで、5個100円という値段が

            手頃で、中身のチョコがおいしいので、ついつい買ってしまう。

            貯まった空き箱は、いつか何かに使う日がくると思っている。

・明治クリームキャラメル 厚み20㍉。やや厚すぎて扱いにくい。

        キャラメル箱の構造は、引き出しやすさの点で抜群なのだけれど。

9 

2 自作の箱

  マッチ箱のように丈夫なものを作ることにしました。

  外箱にはボール紙、内箱には厚紙を使います。

  箱の厚みを13ミリにしました。

  陰影を押した紙や小さな手紙などが、入る隙間がほしかったからです。

  最近の作った箱は下の写真のとおりです。

  友人のご夫婦ネーム印と、巻物風の小さな手紙をこの箱に入れて郵送しました。

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  引き出す楽しみ。仕舞う愉しみ。

  箱は、それらを与える最も適した仕掛けの一つだ。じっさいに作ってそう思いました。

   

                             

       

DVD 未来を生きる君たちへ ☆☆☆☆★

■ HAEVNEN (原題「復讐」) デンマーク/スウェーデン 2011年公開 118分

■ 監督 スサンネ・ビア

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暴力を受けた者は どうするのか。

復讐か 諦めか それとも…。

映画はこの問いに対するひとつの解を、緻密な脚本と丁寧な映像で探っていく。

ふたりの少年の行動と、二つの家庭の姿と、ヨーロッパとアフリカの世界とを描

きながら、観る者にもそれを考えるように促すのだ。 

どの地域でも、どの集団でも起こりうる暴力による支配と圧殺。

一方で芽生える憎しみ。ふくらむ報復の意思。そして、その果てにあるのは…。

ミカエル・パーシュブラント演じる父親の姿が、その解として用意される。

「未来を生きる君たちへ」今まさに観るべきDVDのひとつと云えるだろう。

映画 KOTOKO ☆☆☆☆★

■ KOTOKO 91分 (シネマスコーレ)

■ 監督・脚本・撮影・編集・出演  塚本晋也

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 強烈な映像 過剰とも感じるほどの音響 そして琴子の胸から吐き出される歌

 塚本の畏るべき才気が、映画の全編を貫いて疾走する。

 そして、観る者の胸に刺さってくる。

 心の底までふるわせるような邦画を観たのは、ほんとうに久しぶりのことだ。

 瞠目すべき今年の日本映画の傑作。必見! 

 

映画 オレンジと太陽 ☆☆☆☆

■ ORANGES AND SUNSHINE イギリス 106分 (名演小劇場)

■ 監督 ジム・ローチ

■ 主演 エミリー・ワトソン

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実在の人物マーガレット・ハンフリーズを演じたエミリー・ワトソンが素晴らしい。

2カ国の政府や宗教団体からの圧力や、周りの人間との軋轢にも負けない女

性の、人間的な弱さや美しさを体現している。

J・ローチ監督の長編第1作とのことだが、物語の内容にふさわしい堅実な演出

であり、これからの作品にも期待したい。 

映画 風にそよぐ草 ☆☆☆★

■ LES HERBES FOLLES フランス/イタリア 104分 (名演小劇場)

■ 監督 アラン・レネ

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監督がレネと知りながら観るのは、ちょっと辛い映画だった。

89才のA・レネの最新作である「風にそよぐ草」は、A・レネの晩年作でもある。

偉大なシネアスト、レネも年老いたのか。残念ながら心躍る出来ではなかった。

しかし、A・レネを尊敬していることに変わりはない。

もし、映画「去年マリエンバートで」を観なかったのなら、

映画のもつ衝撃というものを、私はきっと知らなかっただろう。

「二十四時間の情事」(原題「ヒロシマ・わが愛」)を観たから、映画は文学に勝ると

も劣らないほど、人間の意識の流れをあざやかに表すことができる芸術だと思った。

「夜と霧」のナチ収容所を撮った映像は、その後の映画に紛れもなく大きな影響を

与えてきた。

そんな映画をつくった監督でも、いつか隆盛期は過ぎ去るのか…。

そんなことを思わせる、ちょっと辛い映画でした。

DVD 黄金 ☆☆☆☆★

■ THE TREASURE OF THE SIERRA MADRE 1948年製作 アメリカ 125分

■ 監督 ジョン・ヒューストン

■ 出演 ハンフリー・ボガート  ウォルター・ヒューストン

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 2時間たっぷりと愉しめる、男くさい娯楽映画の傑作。

 ダブズを演じるボガートも悪くはないが、年老いた山師役のW・ヒューストンも

 魅力的な役者で、この映画でアカデミー助演賞を与えられたそうだが、それも

 肯ける好演ぶり。

 息子のJ・ヒューストンも、この作品で監督賞と脚本賞を射止めたそうだから、

 この映画は、父子の才能が結実された作品と言えるのだろう。

 今のハリウッド映画ではちょっとお目にかかれそうもない「男らしい映画」だ。

DVD ウィンターズ・ボーン ☆☆☆☆

■ WINTER'S BONE アメリカ 2011年公開 100分

■ 監督 デブラ・グラニック

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 非商業的な映画において 日本映画はアメリカ映画に引けをとらない。

 しかし、この「ウィンターズ・ボーン」を観ると アメリカンインディーズフィルムの

 底力には 正直舌を巻いてしまう。

 リーのような少女は日本映画にも登場することがある。だが、それはどうも嘘くさい

 作り物でしかない人物像なのがほとんどだ。 

 一方、ジェニファー・ローレンスが演じるリーには まぎれもない存在感がある。

 それは、原作・脚本がきわめて優れており、それを生かした演出がされている

 からであろう。

 名もない陰った湖で 響くチェーン・ソーの音。

 跳ね上がるみずしぶき。

 伸ばしたリーの腕。

 リーはこの瞬間を境に 全てを引き受け 荒れ野に生きる大人になっていくのだ。

 

映画 裏切りのサーカス ☆☆☆☆★

■ TINKER TAILOR SOLDIER SPY イギリス/フランス/ドイツ  128分

                                (TOHOシネマズ名古屋ベイシティ)

■ 監督 トーマス・アルフレッドソン

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 諜報活動をリアルに描いた上質の映画だ。

 「サーカス」と呼ばれる英国諜報部の内部に長年潜むソ連のスパイ「もぐら」。

 それは誰か。真に実在するのか。

 サーカスを追われた老諜報員が二重スパイを炙り出す緊迫の2時間。

 クールな脚本、演出、演技が堪能できる映画である。

 

DVD ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地雷鳴 ☆☆☆☆

■ 蘇乞見 HERO AMONG HEROES 香港 1993年製作(劇場未公開) 92分

■ 監督 ユエン・ウーピン(袁和平)

■ 主演 ドニー・イェン(甄子丹)

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 29才のドニー・イェンの動きが素晴らしい。

 あまりにも敏捷で、映画の1コマでは画面が流れてしまうほどだ。

 ご都合主義のストーリーで、荒唐無稽な剣戟アクションで、

 過剰な役者たちの演技で、辟易しそうな泥臭い笑いのてんこ盛り映画だが

 ドニー・イェンの見事な身体能力が見られるのなら、それも許してしまおう。

 人間の動きに、これほどまでに惚れぼれ出来るのは、映画という動きを写

 し出す装置の醍醐味に他ならないのだから。