映画 オペレーション・メコン ☆☆☆

■ 湄公河行動 2016年 中国 140分
                  (シネマスコーレ)
■ 監督 ダンテ・ラム
■ 脚本  チュー・カンキ
              ラウ・シウクワン
              タム・ワイチン
              エリック・リン
■ 撮影 フォン・ユンマン
■ アクション監督 トン・ワイ
■ 出演 チャン・ハンユー
     エディ・ポン


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久々のダンテ・ラム監督作品の名古屋上映だ。
ラムの映画チームが見せる香港クライムアクションを
期待して映画館へ行った。

ラオス、タイ、ミャンマーにまたがる黄金三角
地帯の麻薬集団の撲滅のアクション映画である。

「密告・者」「証人」で私を魅了したラムのアク
ションシーンは、本作でもパワーアップして、2時
間20分の長尺をノンストップで疾走する。

ショッピングセンターのフードコートでの銃撃戦。
機関銃で特警を殺傷する麻薬漬けになった少年たち。
追う者と逃げる者の攻防。カーチェイス。
危機一髪のハラハラドキドキの連続である。

しかし「ブラッド・ウエポン」「激戦」で見せた
個人の哀しみや怒りはわずかに描かれるばかりで、
国家への献身ぶりの方が強調されているように感じた。

本作の製作が「香港」もしくは「香港・中国」ではなく
「中国」であるのも気がかりだ。
ダンテ・ラム監督には香港資本で、個人の怒りに満ちた
犯罪アクション映画をもっともっと撮ってほしい。



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夏の嵐 ☆☆☆☆

■ 1954年 イタリア 119分 (WOWOW)
■ 監督 ルキノ・ヴィスコンティ
■ 原作 カミッロ・ボイト
■ 脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーゴ
       ルキノ・ビスコンティ
■ 撮影 
G・R・アルド
       ロバート・クラスカー
■ 出演 アリダ・ヴァリ
      ファーリー・グレンジャー 

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恋しい。
恋しい。
あの人が恋しい。

その恋慕の情は
他人にはきっと愚かしい狂態と映るのだろう。

でも、狂態がなぜ悪い。
愚かでなぜ悪い。

壮大なスケールで華麗に描く女の真情。
ビスコンティが撮ると
なぜ、かくも胸を打つのだろうか。


   

DVD カサノバ ☆☆☆☆

■ IL CASANOVA DI FEDERICO FELLINI
    1976年 イタリア 154分
■ 監督 フェデリコ・フェリーニ
■ 脚本 フェデリコ・フェリーニ
       ベルナルディーノ・ザッポーニ
■ 影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
■ 音楽 ニーノ・ロータ
■ 美術 ダニロ・ドナティ

 

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フェリーニのまえにフェリーニ無く
フェリーニのあとにフェリーニ無し

肉感的な嬌態
官能的で滑稽
狂瀾で純粋

フェリーニは映像の魔術師である。

映画 エル ELLE ☆☆☆

■ ELLE 2016年 フランス 131分
              (ミリオン座)
■ 監督 ポール・ヴァーホーヴェン
■ 原作 フィリップ・ディジャン
■ 脚本 デヴィッド・バーク
■ 撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ
■ 音楽 アン・ダッドリー
■ 主演 イザベル・ユペール

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果てを知らない人間の欲望の、その果てを見るようだ。

イザベル・ユペールが演じるミシェルの複雑性と虚無感
ジュディット・マーレの扮する母親のけばけばしい存在感

何を見ているのだろう。
このフランス女優ふたりの目は。
底なしの凄さ、怖さ。
それがこの映画を成立させている。


映画 十年 ☆☆☆

■ TEN YEARS  2015年 香港 108分(名古屋シネマテーク)
■ 監督 クォック・ジュン「エキストラ」
     ウォン・フェイバン「冬のセミ」
      ジェヴォンズ・アウ「方言」
      キウィ・チョウ「焼身自殺者」
              
ン・ガーリョン「地元産の卵」
 
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2025年になったら香港はどう変わるのか。
その不安感を五つのエピソードで映像化した作品だ。

中国共産党の強大な圧力がじわじわと香港をおおう今
である。十年後ならどうなるか。
その危機感がスクリーンからストレートに伝わってく
る。

例えば、「方言」では、広東語を使う人たちの悲喜劇
を通して、思想統制につながる言葉狩りの恐ろしさの
萌芽が。
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「地元産の卵」では、共産党政府が監視の手先として
使う「少年団」の紅衛兵化が。
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十年後の香港はほんとうにどうなるのだろう。


DVD アルジェの戦い ☆☆☆☆☆

■ (原題)LA BATTAGLIA DI ALGERI
   1966年 イタリア/アルジェリア 122分 
■ 監督 ジッロ・ポンテコルヴォ
■ 原案 フランコ・ソリナス
       ジッロ・ポンテコルヴォ
■ 脚本 フランコ・ソリナス
■ 撮影 マルチェロ・ガッティ
■ 音楽 エンリオ・モリコーネ
      ジッロ・ポンテコルヴォ


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「アルジェの戦い」。
50年ぶりの再見だ。

いま観ても全く色あせてはいない。
欧州や中近東で頻発するテロと称される事件を
見るにつけ、この映画の強烈さはいや増して、
観る者に迫ってくる。


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1954年から62年に起きたアルジェリアの
戦争を、ジッロ・ポンテコルヴォたちは、記録
映像を使用せずに、冷徹にしかも力強く描いた。

フランス政府による謀略とそれに対するアルジ
ェリア民族解放戦線の報復の様を、エンリオ・
モリコーネの音楽とマルチェロ・ガッティのカ
メラが、ドキュメンタリー以上の生々しさで活
写する。

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民族独立のためのテロと呼ばれる手段はほんと
うに許されない行為なのか。

この作品はいまも観る者に問い続けている。

 

映画 ベイビー・ドライバー ☆☆☆☆

■ BABY DRIVER 2017年 アメリカ 113分
       (ミッドランドシネマ 名古屋空港)
■ 監督 エドガー・ライト
■ 脚本 エドガー・ライト
■ 撮影 ビル・ホープ
■ 編集 ポール・マクリス
       ジェナサン・エイモン
■ 音楽 スティーヴン・プライス
■ 出演 アンセル・エルゴート
      ケヴィン・スペイシー
        リリー・ジェームズ
       
ジェイミー・フォックス
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カーチェイス映画はこれまでにたくさん作られた。
今さら派手なだけの車追劇なら御免こうむりたい。

しかし、お気に入りのエドガー・ライト監督の最新作だ。
これだけはぜったい見逃せない、と映画館へ足を運んだ。


なんと音楽と映像が見事にシンクロしたノリノリの快作だった。 

これまでの作品は、サイモン・ペッグと共同脚本で撮っていたが
「ベイビー・ドライバー」はライトのオリジナル脚本だ。

ペッグは出演もしていないが、それでもクレージーな世界を
テンポよく展開させる巧みなライトの才気は並ではない。

この映画の主役は「音」だろう。
ベイビーのiPod。
黒人の里親の手話。
ベイビーの母親の歌声。
犯罪仲間と聴くイヤホーン。

「ベイビー・ドライバー」は、お金を払って観るのに惜しくない
今夏では貴重な一作だ。

エドガー・ライトの作品には感じるものが在る。

2004年「ショーン・オブ・ザ・デッド」
2007年「ホットファズ」
2013年「ワールズ・エンド」

映画 裁き ☆☆☆☆

■ COURT 2014年 インド 116分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督 チャイタニヤ・タームハネー
■ 脚本 チャイタニヤ・タームハネー
■ 出演 ヴィーラー・サーティダル
            ヴィヴェーク・ゴーンバル

              
ギータンジャリ・クルカルニー
      ブラディーブ・ジョーシー


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民衆歌手のカンブレが逮捕された。
罪名は下水清掃人の自殺幇助。
カンブレの歌が自殺を煽ったという。

弁護人のヴィネィ
女性検察官のヌータン
裁判官はサダーヴァルテー


この映画の表現法に引き付けられる。

音楽を排除した現実音のみの映像で描写
するリアルな手法、だけではない。

裁きの場で見られる他の訴訟の取り入れ方。

証人たちの隠れた事情の表し方。

そして、何よりも素晴らしいのは、
弁護人、検察官、裁判官の日常私生活を描
いたこと。


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そうすることで、この作品は単なる裁判劇
映画のわくをこえ、生活している人たちの
姿を確かにとらえているなあと感じられる。

監督がみせる広がりの手法は、確かさを
描く方法でもあったように思う。


製作時28歳のインドの映画監督タームハネー。
この人のこれからの映画がとても楽しみ。


 

映画 22年目の告白 ‐私が殺人犯です‐ ☆☆

■ 2017年 117分 (ミッドランドシネマ名古屋空港)
■ 監督 入江悠
■ 脚本 平田研也
        入江悠
■ 撮影 今井孝博
■ 音楽 横山克
■ 出演 藤原竜也
        伊藤英明
        夏帆

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禍々しい殺人の告白本を発表する加害者。

たぎる憎悪と報復感情を露わにする被害者の家族。

世間の興味を煽るように報道するメディア群。

いったい殺人犯のねらいはなにか?


残虐なシーンを絡めつつ、観客の推理を巧みにはぐ
らかしながら映画は展開する。引き込み方も上手い
と思う。

しかし、観終えたとき、おや?と思う点がどうしても
いくつか残る。どうもスッキリしない。
もっと旨くだましてほしかったな、と正直思った。
(詳しくは未見の人のためにこれ以上書かないが‥)


映画 残像 ☆☆☆☆

■  POWIDOKI  2016年  ポーランド 99分
         (名演小劇場)

■ 監督 アンジェイ・ワイダ
■ 脚本 アンジェイ・ワイダ
■ 撮影 パヴェウ・エデルマン
■ 音楽 アンジェイ・パヌフニク
■ 出演 ボグスワフ・リンダ
        ブロニスワヴァ・ザマホフスカ


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アンジェイ・ワイダ。
「自由」と「抵抗」の映画作家。

90歳にして、前衛画家ストゥシェミンスキの最期
を、はっと胸を衝くショットを交えて描き、そして
昨年に逝去した。

「灰とダイヤモンド」でみせた革命への痛切は
遺作となったこの「残像」にも感じられる。

ワイダが追究したかったのは、人の持つ強い意志の
在り様だったに違いない。
と同時に、全体主義への反発と警鐘だったろう。

主演のボグスワフ・リンダと
娘役のブロニスワヴァ・ザマホフスカが
素晴らしい。

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ワイダは佳き俳優にも恵まれた映画監督だった。

映画 まるでいつもの夜みたいに ☆☆

■ 2017年 74分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督・撮影・編集 代島治彦
■ 出演 高田渡 中川イサト 中川五郎

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フォーク・シンガー高田渡のドキュメンタリー映画である。

内容は、2005年3月27日に東京で行われた最後の
ミニハウスでの公演と、彼の死を惜しむ友人のインタ
ビューから構成されている。

高田渡は、同年4月3日北海道でのライブ後に倒れ、
16日入院先の病院で死去した。56歳没。

12年後の今年にこの映画が製作された理由を私は
知らないが、映画の撮り方も、録音も、編集も、全体と
してはこれと言って目を引くような出来とは思えない。
ただひたすら高田渡の唄う姿をフィルムに残したいと
いう思いの強さは感じなくもなかった。


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私はなぜこの映画を観たいと思ったのだろう。
彼のしみるような唄声を今もウオークマンでとき
どき聴く私は、懐かしさゆえか、最期のライブを
聴きたいとの思いゆえか。
酒好きの彼の唄をスクリーンで聴くには、こちら
も酒を飲むのが礼儀というものだ。そう思って缶
ビールをひとつあおって映画館へ行った。


さて、高田渡の唄を直接聴いたのは、2000年
12月6日の名古屋・栄・アートピアホールでの
「五つの赤い風船コンサート」でゲストとして登
場し、「夕暮れ」ほか2~3曲を唄った時である。
高田はやや酩酊気味だったが、調子をくずさず
最後まで唄い、会場の人たちも皆ほっとした顔
を見せたのをよく憶えている。

ところで、彼の仲間だった加川良もつい最近の
4月5日に病没した。
良の声質が好きだった私は2006年5月4日
名古屋・今池のライブハウスTokuzuで「教訓
Ⅰ」の熱唱を聴いたことがある。それとても 
過去の1ページとなってしまった。


閑話休題、この映画のことである。
ごく普通のドキュメンタリー映画であることに
がっかりしたかと言うとそうでもない。
高田渡の「風」を唄う姿と声が胸に迫り、ここ
ろのふるえるのを感じたのだ。
観に行ってよかったと思った。


   頭の上を吹く風よ

 
仲間がいま 何をしているのか きかせてくれ
 彼はいま 何を見ているのか
 もうひとりの彼は 何を考えているのか
 遠くの彼は だれと心を通じているのか

 あのひとの目は 何を言おうとしていたのか
 そんな気持ちが唄に 歌えたらな
 そしたら ぼくはぼくに なれるのにな

     「風」より  作曲・イギリス民謡
             作詞・朝倉勇
                         唄・高田渡

高田渡も、加川良も、その唄声は私のなかに
消えることなく残っている。


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映画 台北ストーリー ☆☆☆☆

■ 原題 「青梅竹馬」(幼馴染) Taipei Story
  1985年 台湾 119分 (シネマスコーレ)
■ 監督 エドワード・ヤン(楊徳昌)
■ 製作 ホウ・シャオシェン(侯孝賢)
■ 脚本 チュー・ティエンウェン(朱天文)
       ホウ・シャオシェン
       エドワード・ヤン
■ 撮影 ヤン・ウェイハン(楊渭漢)
■ 音楽 ヨーヨー・マ(友友馬)
■ 出演 ツァイ・チン(蔡琴)
       ホウ・シャオシェン

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エドワード・ヤン監督の長編第2作目作品。

ホウ・シャオシェン監修による4Kデジタル修復版で
2017年5月から待望の日本初公開。
名古屋では、シネマスコーレ劇場での上映である。

少年野球時代の夢想をなおも引きずる布地商の阿隆。
勤める会社が買収され解雇となったキャリアの阿貞。

急速に近代化・都市化が進む台北。
商機に乗れない人々の心理と行動。

変わりゆく街の風景。
すれ違う感情。

監督ヤンの描く人々の姿と風景に
なぜかくも心を揺さぶられるのだろうか。

私たちは
たとえ変わることを選んだとしても
逆に、変わらないことを望んだとしても
現実は、思惑どおりにならない。
そう思い知らされる。

それゆえ戸惑い
打ちひしがれて
現実を受け入れる。

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その姿を共感をもってみずみずしく映し出し
人を追いやる風景の変貌をあざやかに示す
エドワード・ヤンのフィルム。
それは常に、静かで、しかし激しい。



 
  

DVD M ☆☆☆☆

■ 1931年 ドイツ 99分 (Amazon購入)
■ 監督 フリッツ・ラング
■ 原作 エゴン・ヤコブソン
■ 脚本 テア・フォン・ハルボウ
       フリッツ・ラング
■ 撮影 フリッツ・アルノ・ヴァグナー
■ 出演 ペーター・ローレ

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86年前の映画である。
しかし、今の世の中を描いている。
今の人たちの内のある感情を暴いている。


繰り返される幼女誘拐殺人。
捜査に乗り出す警察と、或る「組織」。

殺人者自身も止められない殺害欲求。
被害家族や世間の人々から噴き出す報復感情。

フリッツ・ラングは
シニカルな笑いと
独特の映像感覚
人間の内にある多様な残酷感情を
あざやかに描き切る。

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映画 パーソナル・ショッパー ☆☆

■ PERSONAL SHOPPER 2016年 フランス 105分
             (センチュリーシネマ)
■ 監督 ケネス・ロナーガン
■ 脚本 ケネス・ロナーガン
■ 撮影 ジョディ・リー・ライプス
■ 出演 クリステン・スチュワート

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この映画を観終えてふと思い出した。
私のスポーツ仲間のある女性が語ったことである。

自分は暗い部屋で人影が動くのをよく見る。
それが近づいてくるので避けようとするが身動きできない。
金縛りになったようだった。
そういうことがあるのは自分は霊感が強いからだと思うの。
その人は仲間の皆にそう話した。

皆は半信半疑の表情で首を傾げた。
私も同じだった。
それは錯視ではないのかと疑った。

でも、霊感の強い人は本当に存在するのかも知れない。
この映画の主人公モウリーンのように。

死んだモウリーンの兄。
彼からのサイン。
それを期待して待っていたはずのモウリーンだったが・・・。


どれだけの観客があのような結末を予期したろうか。
あのラストは一体何を意味しているのだろうか。

WOWOW 狼は暗闇の天使 ☆☆☆

■ 原題「SALVO(サルヴォ)」 2013年 イタリア 106分
                         
(劇場未公開 WOWOW放映)
■ 監督 ファビオ・グラッサドニア
       アントニオ・ピアッツァ
■ 脚本 ファビオ・グラッサドニア
       アントニオ・ピアッツア
■  撮影 ダニエーレ・チプリ

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原題のSALVOとは、主人公でマフィアのヒットマンの名。

それを「狼は暗闇の天使」と邦題にしたのは妙訳だ。


それはさておき、
この作品の特徴は映像がとても暗いことだ。
始めはテレビの画面調節のミスかと思ったほどである。

シーンの長さも非ハリウッド的で軽い驚きを覚える。
しかし、徐々に画面から目が離せなくなった。
ストーリー展開の行方がしだいに気になりだす。

組織とどう折り合いをつけるのか。
少女をどうするのか。


全編が音楽を排した現実音だけで展開していく映画
だからこそ際立つ主人公の行動と表情。

観終えて(映画の堪能を味わった)と気づく異色の
作品。一見の価値を十分に備えた映画である。

映画 マンチェスター・バイ・ザ・シー ☆☆☆☆

■ MANCHESTER BY THE SEA 2016年 アメリカ 137分
                  (ミリオン座) 
■ 監督 ケネス・ロナーガン
■ 脚本 ケネス・ロナーガン
■ 撮影 ジョディ・リー・ライプス
■ 音楽 レスリー・バーバー
■ 出演 ケイシー・アフレック
       ルーカス・ヘッジズ
      
ミシェル・ウィリアムズ

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C・アフレックが素晴らしい!






映画 イップ・マン 継承 ☆☆☆

■ 「葉問3」 2015年 中国/香港 105分
        (センチュリーシネマ)
■ 監督 ウィルソン・イップ
■ アクション監督 ユエン・ウーピン
■ 脚本 エドモンド・ウォン
       チェン・タイリ
       ジル・レオン
■ 撮影 ケニー・ツェー
■ 音楽 川井憲次
■ 出演 ドニー・イェン
       マックス・チャン
      

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おそらく、「葉問3部作最終章」ということになるのだろうか。


50歳を少し過ぎたドニー・イェンは、相変わらず切れ
のよいカンフーアクションを見せる。そして妻想いの
人でもある詠春拳の達人を好演している。

この映画の印象はすがすがしい。
登場する悪役たちは非道卑劣な輩たちではなく、己

の肉体で勝負することに固執でもしているのかと思う
くらいある意味フエアな男たちとして描かれている。

マイク・タイソンが演じる不動産屋フランクにしても勝
負のルールは守るし、負ければきっぱり認める。

本当に不動産屋なのだろうかと疑いたくなるような
格闘狂のナイスガイなのだ。

いずれにせよ、葉問の妻ウィンシンの存在がこの映
画では大きい。

この映画がカンフー映画らしからぬ味わい深いラス
トシーンを持ったのもそれを示して興味深い。



DVD さすらい ☆☆☆☆

■ IL GRIDO(原題 「叫び」) 1957年 イタリア 102分
                  (TSUTAYA レンタル)
■ 監督 ミケランジェロ・アントニオーニ
■ 脚本 エンニオ・デ・コンチーニ
       エリオ・バルトリーニ
       ミケランジェロ・アントニオーニ
■ 撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
■ 音楽 ジョヴァンニ・フスコ
■ 出演 スティーヴ・コクラン
       アリダ・ヴァリ
              ドリアン・グレイ
        
ベッツィ・ブレア

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北イタリアを東に流れるポー川の流域。

妻となるはずだったイルマから別れを告げられた労働者アルド。
娘とさすらう男の寒々とした姿。

アルドは昔の女からガソリンスタンドの女へ、そして別の若い女へと。
しかし、またさすらいへ。

閉鎖中の工場の鉄塔。
イルマの叫び。

アルドの求めたものは何だったのだろう。
イルマの求めたものは何?

男にとって女とは。

女にとって男とは。
 
アントニオーニが没して10年めの7月がもうすぐ来る。

 

NHK BS 夏の庭 ☆☆☆

■ The Friends 1994年 113分 (NHKBS 放映)
■ 監督 相米慎二
■ 原作 湯本香樹実
■ 脚本 田中陽造
■ 撮影 篠田昇
■ 音楽 セルジオ・アサド
■ 出演 三國連太郎
       坂田直樹 王泰貴 牧野憲一

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相米慎二監督の才気が随所に光る好編。


トップシーンは、雨の中の少年サッカー試合。
相米流の長回し撮影は、映画の中に観る者を徐々に誘う。

仲良し三人組も悪くはないが、彼らに時々まとわりつくカメラ
小僧が可笑しい。
あのキャラクターは相米慎二の投影かも知れないし、この
映画製作に係わった映画人たち全員のそれかも知れない。

相米映像ワールドのきらめきが眩しい。
たとえば、少年たちが井戸を覗き込むショット。
たとえば、古香弥生(淡島千景)がいっしゅん正気にもどるショット。
たとえば、喜八(三國連太郎)の廃屋を掃除していくショット。
そこには、映画の冒険が確かにあるのだ。



DVD 味園ユニバース ☆☆☆☆

■ 2015年 103分
■ 監督 山下敦弘
■ 脚本 菅野友恵
■ 撮影 高城風太
■ 音楽 池永正二
■ 出演 渋谷すばる
       二階堂ふみ
       康すおん

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主演の二人の存在感が私たちを圧倒する。

山下敦弘の演出は怖いほどに生々しい。

その生々しさの中に
人間という生きもののしぶとさと、哀しみと、
自暴自棄さと、自分を見出す力強さを描いている。

山下敦弘は健在である!



 
 

DVD 北ホテル ☆☆☆ 

■ HOTEL DU NORD 1938年 フランス 110分
                (レンタル GEO
■ 監督 マルセル・カルネ
■ 原作 ウージェーヌ・ダビ
■ 脚本 マルセル・カルネ
■ 台詞 アンリ・ジャンソン 
       ジャン・オーランシュ
■ 撮影 アルマン・ティラール
■ 音楽 モーリス・ジョーベール
■ 美術 アレクサンドル・トロネール
■ 出演 ジャン・Pオーモン
       アナベラ
       ルイ・ジューヴェ
       
アルレッティ

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映画でしばしば見られる現象がある。
それは脇役が主役を「喰ってしまう」ことである。

「北ホテル」の主役は、若い男のピエールと恋人の
ルネ。それぞれを演じる二人は当時売り出し中の
若い俳優。

喰ったほうの脇役は、中年男のエドモン(役者はル
イ・ジューヴェ)、娼婦レイモンド(アルレッティ)。

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脚本は主・脇を同等に書き込んでいる。
だが、全く違うのは、役者の存在感の大きさ。

伝わってくる役者の「厚み」が違う。
「人生を感じさせる厚み」と言っても、大げさではないだろう。

その厚みが、この作品に陰影深い味わいを与えるのだ。

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それに加えて
運河のセットの素晴らしさ。
洒落た演出。
ホテルに集う庶民を演じる役者連中のうまさ。


ああ、フランス映画はいいなぁ。
しみじみとそう思わせるカルネの映画の愉しさよ。

  

映画 ゴースト・イン・ザ・シェル ☆☆☆

■ GHOST IN THE SHELL 2017年 アメリカ 120分
              (ミッドランドシネマ名古屋空港)
■ 監督 ルパート・サンダーズ
■ 原作 士郎正宗
■ 脚本 ジェイミー・モス
       ウィリアム・ウィーラー
       アーレン・クルーガー
■ 撮影 ジェス・ホール
■ 音楽 クリント・マンセル
       ローン・バルフェ
■ 出演 スカーレット・ヨハンソン
       ビートたけし
       ジュリエット・ビノシュ

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俳優S・スカーレットの独特な無機質的表情。
それは、心と義体を括り付けたこの映画の主人公
にぴったり。


場所は、高層ビルの森のような無国籍未来都市。
時は、電脳ネットワークと義体化が極度に進む社会。

それは、リドリー・スコットが「ブレードランナー」(82年)
で既に描いた世界のはずである。

それでも、この映画は観る者をひき付ける。
なぜなのだろう。


どこまでゆくのか判らない高度な医療技術の進歩。
脳と心臓と、それ以外の肉体の損傷度のアンバランス。

真実も嘘もないまぜの電気仕掛けのネットワーク。
何かに操られているのか、操る者に知らない間に加担しているのか、
本当のことがワカラナイ。
今はもう始まっているからなのか。


それとも、繰り広げられるアクションが面白いからなのか。
作り込まれた近未来都市や人間の姿が斬新なせいなのか。

それらの全部が観る者の興味をとらえるからなのだろう。

      
 

映画 お嬢さん ☆☆

■ 「THE HANDMAIDEN (侍女)」 2016年 韓国 145分
               (センチュリーシネマ)          
■ 監督 パク・チャヌク
■ 原作 サラ・ウォーターズ「荊の城」
■ 脚本 パク・チャヌク
       チョン・ソギョン
■ 撮影 チョン・ジョンフン
■ 美術 リュ・ソンヒ
■ 音楽 キム・ヨンウク
■ 出演 キム・ミニ
       キム・テリ
       ハ・ジョンウ
       チョ・ジヌン

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この映画の見どころは何なのだろう。

極限の騙し合い?
美意識あふれる性愛描写?

確かに凝った話の構成である。
豪華なセット美術もよくぞここまで作り込んだ
と思わせるのに十分だ。

しかし、映画はいっこうに弾まない。

主要な四人の登場人物に肉体がまるで感じられ
ず、筋立てをなぞり決められたセリフを発する人
形のような演技だった。

まず、ミス・キャストが原因ではないか。

侍女は狡猾でぞっとする内面の凄さが必要なのだが
演じるキム・テリは童顔で清純な顔立ち。

お嬢様は楚々としながら強い被虐性が不可欠なのに
キム・ミニは精神も肉体も狂乱できず中途半端。

詐欺師のハ・ジョンウは非情さのカケラもなく、間の抜
けたような言動に終始し、叔父のチョ・ジヌンの残忍さ
は女に対して発揮せず詐欺師をいたぶるにとどまる。

常軌を超えた人々の世界を描く映画はずなのに、空転
している。壮大なセットも卑猥なセリフも虚しく感じられ
る。

この手の映画(快楽の世界に逆らえずのめり込んでいく
人間を描く映画)は、お膳立てをするだけではダメだのだ。

俳優の肉体を輝かせるために、演出者と演技者がぎりぎ
りと組み合うことが大切なのではないか。めらめらと燃え
上がるような共闘がもっともっと必要だったのではないか。

性愛を描いた往時の日活ロマンポルノの名作群を見よ。
たとえば監督小沼勝、主演谷ナオミの映画。
淫猥な匂いの何と濃厚なことか。
恍惚の表情の何と魅惑的なことか。

パク・チャヌク監督の次回作に期待しよう。

映画 この世界の片隅に ☆☆☆

■ 2016年 126分 (センチュリーシネマ)
■ 監督 片淵須直
■ 原作 こうの史代
■ 脚本 片淵須直
■ 作画監督 松原秀典
■ 撮影監督 熊澤祐哉
■ 画面構成 浦谷千恵
■ 音楽 コトリンゴ

 
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ブラインド・マッサージ ☆☆☆☆

■  推拿 2014年 中国/フランス 115分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督 ロウ・イエ
■ 原作 ビー・フェイユ
■ 脚本 マー・インリー
■ 撮影 ツアン・チアン
■ 音楽 ヨハン・ヨハンソン
■ 出演 ホアン・シュエン
       チン・ハオ
       グオ・シャオトン
       メイ・ティン

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光を見る目 闇を見る目

ツアン・チアンの撮影が素晴らしい。
盲人が捉える周りの気配や、微かな風景のかたち
はこのような見え方をするのだろうかと思わせる。
さらに、男女の身体の手触り、息づかい、声までも
映像として見せてくれる。
 
ヨハンソンの音楽が素晴らしい。

彼らの心情、風のそよぎ、やさしい雨の音、南京の
町を奏でるような音楽だ。

ロウ・イエの映画は、どうして観る者の心を強くゆさ
ぶるのだろう。ときにはげしく、ときにしずかに。
そして
観客それぞれの体のなかに何かをのこしていく。
      

映画 哭声 コクソン ☆☆☆

■ 2016年 韓国 156分 (ミッドランドスクエアシネマ2)
■ 監督 ナ・ホンジン
■ 脚本 ナ・ホンジン
■ 撮影 ホン・ギョンピョ
■ 音楽 チャン・ヨンギュ
       タルバラン
■ 出演 クァク・ドウォン
       國村隼
       チョン・ウヒ
       ファン・ジョンミン

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疑え。惑わされるな。


「チェイサー」(08)、「哀しき獣」(10)のナ・ホンジン監督
の最新作である。
新作「哭声」が発する熱気も尋常ではない。
ナ・ホンジン監督の粘り濃い演出が奥に光っている。

引き千切られるように惨殺される村人たち。
事件が起こるのはいつも雨。
禍々しい殺人現場。

真相はどうだったのか。

救いはあるのか。

わめき声。
異形の人影。
不可解な行動。

粘り濃い演出で最後まで押しきるように描いた不条理劇。
それは、「チェイサー」「哀しき獣」よりも赤裸々で残酷な描
写の連続だった。

観客の私たちは共鳴するか。あるいは違和を感じるか。
それがこの映画の面白いところだ。



 

DVD 韓国ドラマ 砂時計 ☆☆☆

■  1995年 韓国SBS 全24話
■ 演出 キム・ジョンハク
■ 脚本 ソン・ジナ
■ 出演 チェ・ミンス
       コ・ヒョンジョン
       パク・サンウォン
       イ・ジョンジェ

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全24話、およそ1120分に及ぶ堂々たる長編
メロドラマである。

「メロドラマ」の辞解は広辞苑では次のように記されている。

メロドラマ【melodrama】=melodic+drama
もと、18世紀イタリアに起こった、音楽を伴奏として台詞の
朗誦を行う劇。
後に、波瀾に富む感傷的な通俗恋愛劇。



肝心なのは「波瀾」の部分だ。

80年代に起こった光州事件。
現在も続く「政治と金」、「ヤクザと政界」、「コネと出世」。
恋愛と友情、因縁と報復、義理と私憤。
反抗と僕従、家族と組織についてのドラマである。

話の中心人物は、
カジノ界の大物の娘ヘリン
ヤクザのテス
検事のユソク
そして、ヘリンのボディガードのジェヒ。




寡黙なジェヒを演じるイ・ジョンジェ
の存在感が
素晴らしく、この物語を豊かなものにしている。
感傷的な場面は多々あるが、彼の存在と光州
事件とがメロドラマに硬質さを与えている。

ドラマの終わりに近づくことが惜しまれる作品だった。



ホワイト・バレット ☆☆☆

■ 原題「三人行」 2016年 香港 88分
             (シネマスコーレ)
■ 監督 ジョニー・トー
■ 脚本 ヤウ・ナイホイ
       ラウ・ホーリョン
       マク・ティンシュー
■ 撮影 チェン・チュウキョン
         トー・フンモ
       ブライアン・チェン
■ 音楽 ザヴィエル・ジャモー
       ロー・ターヨウ
■ 出演 ヴィッキー・チャオ
       ルイス・クー
       ウォレス・チョン

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ジョニー・トーの最新作。
緊張感に満ちた展開はさすがトーだと感心する。

大部屋の病室。
入院した容疑者と監視する刑事。
病床に横たわるさまざまな患者。
彼らに対応する医師や看護士たち。

本当にこの場所で銃撃戦が始まるのか。
いつ、どのようにして?!

88分のサスペンス。
香港映画はやはり魅力がある。
ジョニー・トーは今も健在である。
深夜の観客たちはトーのフィルムに魅入った。


   

映画 肉体の冠 ☆☆☆

■ CASQUE D'OR(「金髪(の女)」の意?)
   1951年 フランス 98分  (名古屋シネマテーク)
■ 監督 ジャック・ベッケル
■ 脚本 ジャック・ベッケル
       ジャック・コンパネーズ
■ 撮影 ロベール・ルフェーヴル
■ 音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス
■ 出演 シモーヌ・シニョレ
       セルジュ・レジアニ

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娼婦マリーのシモーヌ・シニョレの魅力は

男を断頭台に誘う。




映画 牯嶺街少年殺人事件 ☆☆☆☆☆ 

■ A BRIGHTER SUMMER DAY 1991年
   台湾 236分 デジタル・リマスター版 
        (ミッドランドスクエア シネマ) 

■ 監督 エドワード・ヤン(楊徳昌)
■ 脚本 エドワード・ヤン
       ヤン・ホンカー
       ヤン・シュンチン
       ライ・ミンタン
■ 撮影 チャン・ホイゴン
■ 出演 チャン・チェン
       リサ・ヤン
       ワン・チーザン
       クー・ユールン

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3時間56分の長さで描いた少年譜の傑作!
そのみずみずしさ、生々しさは尋常ではない。


登場人物のすべてが映画のなかで生き、暮らし
ていることをまざまざと感じさせる畏るべきエド
ワード・ヤンのフィルム。


小四、小明、小猫王、飛機、小馬、小虎、ハニー
滑頭、山東、神経、父、母、兄、姉、妹、汪、教師
小明の母、近所の大人・・・・。
中心に描かれるのは
小四少年の感じる前途への憧れと失望。
そして、焦燥、苦悶や衝動。

監督ヤンはそれを繊細に鮮烈なショットで語ってゆく。


たとえば、繊細なショット。
小四と小明が廊下で立ち止まり会話を交わす姿
を木製の扉に写ったかげでとらえたショット。
ふたりのかげはあまりにも、あいまいではかなげ。
そこからは、揺らめくような青春の瞬間が伝わっ
てくる。一瞬の甘美で切ないとき。

鮮烈さで印象に残った圧巻のショットはこうだ。
どしゃぶりの夜、山東一味の店に乗り込み、サニー
の仲間たちが刀剣を使って報復しようとするシーン。

入った店内は停電で暗い。
襲撃仲間のひとりが小さくつぶやく。
「家へ・・・帰ってもいいかな」
(たぶん皆も心の底では怖いのだ)
それを無視して2階に上がる仲間たち。

ぼぅーと照る赤いろうそく。
浮かびあがる山東たちの顔。
気配を感じた山東が灯りをふっと吹き消す。
それを合図にわっと襲う者、襲われる者。

闇で何も見えず、滅多矢鱈に長刀を振りまわす。
その姿さえ、カメラは闇の中のままで映す。
響く怒号と悲鳴。
延々と続く暗闘のショット。



そのようなショットだけに限らない。
全編がみずみずしく、生々しく、繊細なショットで綴
られた
ヤン
の映画「A BRIGHTER SUMMER DAY」は
4時間の長さが当然のように必要だったのだ。