映画 彼女がその名を知らない鳥たち ☆☆☆☆

■ 2017年 123分
 (ミッドランドスクエアシネマ2)

■ 監督 白石和彌
■ 原作 沼田まほかる
■ 脚本 浅野妙子
■ 撮影 灰原隆裕
■ 音楽 大間々昂
■ 
出演 蒼井優  阿部サダヲ

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陣治の最期の願いは
十和子にほんとうに届いたのだろうか。

飛び立つ無数の鳥たちの羽ばたきは
十和子の新しい歩みを祝すためか
それとも
たださよならを告げただけなのか
それとも
これまでのありがとうの挨拶だったか

それとも
それとも
それとも



白井監督の演出は冴えている。
人の抑えられない欲望や衝動、ずるさ
いい加減さを遠慮なく描き切る。

蒼井優の十和子、阿部サダヲの陣治の
圧倒的な存在感。
それは役者の力か。
監督の力か。
その両方だろう。



ラストの回想シーンがいささか長め
だった点を除けば、久々に最後まで
人間の不気味さを見せ続ける胆力の
ある映画だった。


映画 ブレードランナー 2049 ☆☆☆

■ BLADE RUNNER 2049 
  2017年 アメリカ 163分
   (ミッドランドシネマ名古屋空港)

■ 監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
■ 原案 ハンプトン・ファンチャー
■ 脚本 ハンプトン・ファンチャー
       マイケル・グリーン
■ 撮影 ロジャー・ディーキンス
■ 音楽 ハンス・ジマー
       ベンジャミン・ウォルフィッシュ
■ 出演 ライアン・ゴズリング
       ハリソン・フォード
       アナ・デ・アルマス
       
ショーン・ヤング


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映像の華麗さにおいては
35年前に創られた「ブレードランナー」を凌ぐ。

レプリカントの哀しみを痛切に描いた1982年
作品は、造形美の斬新さとともに、生身の人間と
はどのような存在かを鋭く逆射する映画だった。

本作はその未来版であり、異質な他者とのせめぎ
合いを主旋律にして、種の保存を延々と描く映画
だと云えよう。


私には82年版ほどの胸に迫るものを感じなかっ
た。
それは単に、上映時間の長さのせいだけではなく
ハリソン・フォード演じるテッカードを登場させ
たことで、作品の広がりを損ねたためではないか
と思う。


映画 ドリーム ☆☆☆☆

■ HIDDEN FIGURES 2016年 アメリカ 127分
                  (ミリオン座)
■ 監督 セオドア・メルフィ
■ 原作 マーゴット・リー・シェッタリー
■ 脚本 アリソン・シュローダー
       セオドア・メルフィ
■ 撮影 マンディ・ウォーカー
■ 編集 ピーター・テッシュナー
■ 音楽 ハンス・ジマー
      ファレル・ウィリアム
       ベンジャミン・ウォルフィッシュ
■ 出演 タラジ・P・ヘンソン
       オクタヴィア・スペンサー
      ジャネール・モネイ


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黒人女性3人組の活躍ぶりが真直ぐに伝わってくる。
愛らしさや毅然とした生き方が、とてもまぶしい。
アメリカ人の切り拓く精神が生き生きとあふれている。

特筆すべきは、人物のキャラクター、音楽の使い方
そして歯切れのよい編集。
この映画をここちよいリズムのある作品にしている。

映画の邦題は、安易で平凡で陳腐でどう仕様もないけど
原題「HIDDEN FIGURES」には、ほぅと感じ入った。



映画 笑う故郷 ☆☆☆☆

■  EL CIUDADANO ILUSTRE 原題「不都合な市民」
   2016年 アルゼンチン/スペイン 117分
               (シネマスコーレ)
■ 監督 マリアノ・コーン
      ガストン・ドゥプラット
■ 脚本 アンドレス・ドゥプラット
■ 撮影 マリアノ・コーン
     ガストン・ドゥプラット
■ 音楽 トニ・M・ミル
■ 出演 オスカル・マルティネス

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    脚本が最高!  


 
   

映画 サーミの血 ☆☆☆☆

■ Sameblod 2016年 108分
  スウェーデン/ノルウェー/デンマーク
  
     
 (センチュリーシネマ) 
■ 監督 アマンダ・シェーネル
■ 脚本 アマンダ・シェーネル
■ 撮影 ソフィア・オルソン
      ぺトリュス・ショーヴィク
■ 
音楽 クリスティアン・エイドネス・アナスン

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    レーネ=セシリア・スパルロク
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    ミーア=エリーカ・スパルロク
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    マイ=ドリス・リンピ
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 3人の出演者が素晴らしい。

     今年必見の傑作!





映画 NEW シネマ歌舞伎 四谷怪談 ☆☆

■ 2016年 松竹 118分 (ミッドランドシネマ名古屋空港) 
■ 監督(舞台の演出・美術も) 串田和美
■ 出演 中村獅童 伊右衛門
      中村勘九郎 直助
       中村七之助 お袖
       中村扇雀 お岩 

       
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感心したのは歌舞伎役者のタフネスだ。

連続した動作を操る持続力ある身体。
腹の奥から響かせる朗々とした声。
壊れるかと思うほどの歌舞く顔面。

歌舞伎は桟敷で実際に観る芸術だと得心。
高い入場券を払ってもいつかこの目で見てみたい。


映画 スイス・アーミー・マン ☆☆

■ SWISS ARMY MAN 2016 スウェーデン/アメリカ 97分
             (センチュリーシネマ)  
■ 監督 ダニエル・シュナイナート
       ダニエル・クワン
■ 脚本 ダニエル・シュナイナート
       ダニエル・クワン
■ 撮影 ラーキン・サイプル
■ 音楽 アンディ・ハル
       ロバート・マクダウェル


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ハンクはどうして無人島にいたのか。
死体の青年はどこからどう流されてきたか。

その原因や経緯はこの映画ではどうでもよい
ことであるらしい。

死体はハンクにとってどんな存在なのか。

映画の作り手たちはそれを伝えたいようだが
死んだ人をアーミーナイフのように扱う発想
と映像を延々と見せられると、ハンクの苦悩
に共感するどころではなく、言いようのない
不快感が突き上げてきた、というのが正直な
ところである。

私はこの映画の何かを見落としているのか。
そんな疑問が生じた作品だった。

名古屋職人展 オアシス21

9月24日 「尾張名古屋の職人展」

栄のオアシス21で開催中の職人展に出かけた。
伝統を守り技を極める職人さんたちが集まっていた。




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名古屋扇子
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ちょっと季節は過ぎたが、扇子に興味があっ
たので時間をかけて眺めた。

名古屋扇子は宝暦(1751~1764)頃に京から
名古屋城に近い西区の地に伝わったらしい。
武士のなかには扇子つくりを内職にしていた
者もいたとか。

現在でも名古屋扇子は年間200数十万本
造られていると言われている。

扇子1本でも、「骨屋」「紙屋」「絵屋」「
折り屋」が係わり、手間のかかる作業を経て
出来上がるのだ。

さて、山内美鳳という書家の揮毫した扇子が
目に留まった。賢治の「雨ニモ負ケズ」の詩
が書かれている扇子である。

最近自分には謙虚さが欠けているのではないか
と思うときがある。
いまこそ戒めの謹風をわれに送れ。
この扇子を買うことにした。


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職人さんたちの仕事の所作を見ていると
つくづく謙虚に精進することの美しさを
感じる。


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手仕事のおもしろさ、いとしさがこの頃
分かるようになってきた気がする。

 

DVD ジプシーのとき ☆☆☆☆

■ DOM ZA VESANJE 1989年
   ユーゴスラビア 126分
■ 監督 エミール・クストリッツァ
■ 脚本 エミール・クストリッツァ
      ゴルダン・ミヒッチ
■ 撮影 ヴィルコ・フィラチ
■ 音楽 ゴラン・ブレゴヴィッチ
   

ジプシーのとき00


クストリッツァの映画は、哀しくて、可笑しい。
絶望的のようで、楽観的でもあり、人生の不可思
議さを多彩な人物を通して見せてくれる。

それにしても、どうしてあのような魅惑的な映像
を創造できるのだろうか。

この作品は、95年の「アンダーグラウンド」や
98年の「黒猫・白猫」に先んじて製作された傑
作である。




ジプシーのとき03

ジプシーのとき01


映画 ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦 ☆☆☆

■ ANTHROPOID 2016年 チェコ/イギリス/フランス 120分
           (名演小劇場)
■ 監督 ショーン・エリス
■ 脚本 ショーン・エリス
            アンソニー・フルーウィン
■ 撮影 ショーン・エリス
■ 音楽   ロビン・フォスター

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ナチスの魔の手で蹂躙されるプラハの街。

ハイドリヒを暗殺すれば、事態は好転していくのか。
むしろ苛烈な抑圧が展開されるのか。

この映画のキーポイントはその一点にある。


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映画 オペレーション・メコン ☆☆☆

■ 湄公河行動 2016年 中国 140分
                  (シネマスコーレ)
■ 監督 ダンテ・ラム
■ 脚本  チュー・カンキ
              ラウ・シウクワン
              タム・ワイチン
              エリック・リン
■ 撮影 フォン・ユンマン
■ アクション監督 トン・ワイ
■ 出演 チャン・ハンユー
     エディ・ポン


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久々のダンテ・ラム監督作品の名古屋上映だ。
ラムの映画チームが見せる香港クライムアクションを
期待して映画館へ行った。

ラオス、タイ、ミャンマーにまたがる黄金三角
地帯の麻薬集団の撲滅のアクション映画である。

「密告・者」「証人」で私を魅了したラムのアク
ションシーンは、本作でもパワーアップして、2時
間20分の長尺をノンストップで疾走する。

ショッピングセンターのフードコートでの銃撃戦。
機関銃で特警を殺傷する麻薬漬けになった少年たち。
追う者と逃げる者の攻防。カーチェイス。
危機一髪のハラハラドキドキの連続である。

しかし「ブラッド・ウエポン」「激戦」で見せた
個人の哀しみや怒りはわずかに描かれるばかりで、
国家への献身ぶりの方が強調されているように感じた。

本作の製作が「香港」もしくは「香港・中国」ではなく
「中国」であるのも気がかりだ。
ダンテ・ラム監督には香港資本で、個人の怒りに満ちた
犯罪アクション映画をもっともっと撮ってほしい。



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夏の嵐 ☆☆☆☆

■ 1954年 イタリア 119分 (WOWOW)
■ 監督 ルキノ・ヴィスコンティ
■ 原作 カミッロ・ボイト
■ 脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーゴ
       ルキノ・ビスコンティ
■ 撮影 
G・R・アルド
       ロバート・クラスカー
■ 出演 アリダ・ヴァリ
      ファーリー・グレンジャー 

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恋しい。
恋しい。
あの人が恋しい。

その恋慕の情は
他人にはきっと愚かしい狂態と映るのだろう。

でも、狂態がなぜ悪い。
愚かでなぜ悪い。

壮大なスケールで華麗に描く女の真情。
ビスコンティが撮ると
なぜ、かくも胸を打つのだろうか。


   

DVD カサノバ ☆☆☆☆

■ IL CASANOVA DI FEDERICO FELLINI
    1976年 イタリア 154分
■ 監督 フェデリコ・フェリーニ
■ 脚本 フェデリコ・フェリーニ
       ベルナルディーノ・ザッポーニ
■ 影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
■ 音楽 ニーノ・ロータ
■ 美術 ダニロ・ドナティ

 

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フェリーニのまえにフェリーニ無く
フェリーニのあとにフェリーニ無し

肉感的な嬌態
官能的で滑稽
狂瀾で純粋

フェリーニは映像の魔術師である。

映画 エル ELLE ☆☆☆

■ ELLE 2016年 フランス 131分
              (ミリオン座)
■ 監督 ポール・ヴァーホーヴェン
■ 原作 フィリップ・ディジャン
■ 脚本 デヴィッド・バーク
■ 撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ
■ 音楽 アン・ダッドリー
■ 主演 イザベル・ユペール

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果てを知らない人間の欲望の、その果てを見るようだ。

イザベル・ユペールが演じるミシェルの複雑性と虚無感
ジュディット・マーレの扮する母親のけばけばしい存在感

何を見ているのだろう。
このフランス女優ふたりの目は。
底なしの凄さ、怖さ。
それがこの映画を成立させている。


映画 十年 ☆☆☆

■ TEN YEARS  2015年 香港 108分(名古屋シネマテーク)
■ 監督 クォック・ジュン「エキストラ」
     ウォン・フェイバン「冬のセミ」
      ジェヴォンズ・アウ「方言」
      キウィ・チョウ「焼身自殺者」
              
ン・ガーリョン「地元産の卵」
 
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2025年になったら香港はどう変わるのか。
その不安感を五つのエピソードで映像化した作品だ。

中国共産党の強大な圧力がじわじわと香港をおおう今
である。十年後ならどうなるか。
その危機感がスクリーンからストレートに伝わってく
る。

例えば、「方言」では、広東語を使う人たちの悲喜劇
を通して、思想統制につながる言葉狩りの恐ろしさの
萌芽が。
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「地元産の卵」では、共産党政府が監視の手先として
使う「少年団」の紅衛兵化が。
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十年後の香港はほんとうにどうなるのだろう。


DVD アルジェの戦い ☆☆☆☆☆

■ (原題)LA BATTAGLIA DI ALGERI
   1966年 イタリア/アルジェリア 122分 
■ 監督 ジッロ・ポンテコルヴォ
■ 原案 フランコ・ソリナス
       ジッロ・ポンテコルヴォ
■ 脚本 フランコ・ソリナス
■ 撮影 マルチェロ・ガッティ
■ 音楽 エンリオ・モリコーネ
      ジッロ・ポンテコルヴォ


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「アルジェの戦い」。
50年ぶりの再見だ。

いま観ても全く色あせてはいない。
欧州や中近東で頻発するテロと称される事件を
見るにつけ、この映画の強烈さはいや増して、
観る者に迫ってくる。


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1954年から62年に起きたアルジェリアの
戦争を、ジッロ・ポンテコルヴォたちは、記録
映像を使用せずに、冷徹にしかも力強く描いた。

フランス政府による謀略とそれに対するアルジ
ェリア民族解放戦線の報復の様を、エンリオ・
モリコーネの音楽とマルチェロ・ガッティのカ
メラが、ドキュメンタリー以上の生々しさで活
写する。

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民族独立のためのテロと呼ばれる手段はほんと
うに許されない行為なのか。

この作品はいまも観る者に問い続けている。

 

映画 ベイビー・ドライバー ☆☆☆☆

■ BABY DRIVER 2017年 アメリカ 113分
       (ミッドランドシネマ 名古屋空港)
■ 監督 エドガー・ライト
■ 脚本 エドガー・ライト
■ 撮影 ビル・ホープ
■ 編集 ポール・マクリス
       ジェナサン・エイモン
■ 音楽 スティーヴン・プライス
■ 出演 アンセル・エルゴート
      ケヴィン・スペイシー
        リリー・ジェームズ
       
ジェイミー・フォックス
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カーチェイス映画はこれまでにたくさん作られた。
今さら派手なだけの車追劇なら御免こうむりたい。

しかし、お気に入りのエドガー・ライト監督の最新作だ。
これだけはぜったい見逃せない、と映画館へ足を運んだ。


なんと音楽と映像が見事にシンクロしたノリノリの快作だった。 

これまでの作品は、サイモン・ペッグと共同脚本で撮っていたが
「ベイビー・ドライバー」はライトのオリジナル脚本だ。

ペッグは出演もしていないが、それでもクレージーな世界を
テンポよく展開させる巧みなライトの才気は並ではない。

この映画の主役は「音」だろう。
ベイビーのiPod。
黒人の里親の手話。
ベイビーの母親の歌声。
犯罪仲間と聴くイヤホーン。

「ベイビー・ドライバー」は、お金を払って観るのに惜しくない
今夏では貴重な一作だ。

エドガー・ライトの作品には感じるものが在る。

2004年「ショーン・オブ・ザ・デッド」
2007年「ホットファズ」
2013年「ワールズ・エンド」

映画 裁き ☆☆☆☆

■ COURT 2014年 インド 116分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督 チャイタニヤ・タームハネー
■ 脚本 チャイタニヤ・タームハネー
■ 出演 ヴィーラー・サーティダル
            ヴィヴェーク・ゴーンバル

              
ギータンジャリ・クルカルニー
      ブラディーブ・ジョーシー


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民衆歌手のカンブレが逮捕された。
罪名は下水清掃人の自殺幇助。
カンブレの歌が自殺を煽ったという。

弁護人のヴィネィ
女性検察官のヌータン
裁判官はサダーヴァルテー


この映画の表現法に引き付けられる。

音楽を排除した現実音のみの映像で描写
するリアルな手法、だけではない。

裁きの場で見られる他の訴訟の取り入れ方。

証人たちの隠れた事情の表し方。

そして、何よりも素晴らしいのは、
弁護人、検察官、裁判官の日常私生活を描
いたこと。


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そうすることで、この作品は単なる裁判劇
映画のわくをこえ、生活している人たちの
姿を確かにとらえているなあと感じられる。

監督がみせる広がりの手法は、確かさを
描く方法でもあったように思う。


製作時28歳のインドの映画監督タームハネー。
この人のこれからの映画がとても楽しみ。


 

映画 22年目の告白 ‐私が殺人犯です‐ ☆☆

■ 2017年 117分 (ミッドランドシネマ名古屋空港)
■ 監督 入江悠
■ 脚本 平田研也
        入江悠
■ 撮影 今井孝博
■ 音楽 横山克
■ 出演 藤原竜也
        伊藤英明
        夏帆

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禍々しい殺人の告白本を発表する加害者。

たぎる憎悪と報復感情を露わにする被害者の家族。

世間の興味を煽るように報道するメディア群。

いったい殺人犯のねらいはなにか?


残虐なシーンを絡めつつ、観客の推理を巧みにはぐ
らかしながら映画は展開する。引き込み方も上手い
と思う。

しかし、観終えたとき、おや?と思う点がどうしても
いくつか残る。どうもスッキリしない。
もっと旨くだましてほしかったな、と正直思った。
(詳しくは未見の人のためにこれ以上書かないが‥)


映画 残像 ☆☆☆☆

■  POWIDOKI  2016年  ポーランド 99分
         (名演小劇場)

■ 監督 アンジェイ・ワイダ
■ 脚本 アンジェイ・ワイダ
■ 撮影 パヴェウ・エデルマン
■ 音楽 アンジェイ・パヌフニク
■ 出演 ボグスワフ・リンダ
        ブロニスワヴァ・ザマホフスカ


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アンジェイ・ワイダ。
「自由」と「抵抗」の映画作家。

90歳にして、前衛画家ストゥシェミンスキの最期
を、はっと胸を衝くショットを交えて描き、そして
昨年に逝去した。

「灰とダイヤモンド」でみせた革命への痛切は
遺作となったこの「残像」にも感じられる。

ワイダが追究したかったのは、人の持つ強い意志の
在り様だったに違いない。
と同時に、全体主義への反発と警鐘だったろう。

主演のボグスワフ・リンダと
娘役のブロニスワヴァ・ザマホフスカが
素晴らしい。

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ワイダは佳き俳優にも恵まれた映画監督だった。

映画 まるでいつもの夜みたいに ☆☆

■ 2017年 74分 (名古屋シネマテーク)
■ 監督・撮影・編集 代島治彦
■ 出演 高田渡 中川イサト 中川五郎

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フォーク・シンガー高田渡のドキュメンタリー映画である。

内容は、2005年3月27日に東京で行われた最後の
ミニハウスでの公演と、彼の死を惜しむ友人のインタ
ビューから構成されている。

高田渡は、同年4月3日北海道でのライブ後に倒れ、
16日入院先の病院で死去した。56歳没。

12年後の今年にこの映画が製作された理由を私は
知らないが、映画の撮り方も、録音も、編集も、全体と
してはこれと言って目を引くような出来とは思えない。
ただひたすら高田渡の唄う姿をフィルムに残したいと
いう思いの強さは感じなくもなかった。


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私はなぜこの映画を観たいと思ったのだろう。
彼のしみるような唄声を今もウオークマンでとき
どき聴く私は、懐かしさゆえか、最期のライブを
聴きたいとの思いゆえか。
酒好きの彼の唄をスクリーンで聴くには、こちら
も酒を飲むのが礼儀というものだ。そう思って缶
ビールをひとつあおって映画館へ行った。


さて、高田渡の唄を直接聴いたのは、2000年
12月6日の名古屋・栄・アートピアホールでの
「五つの赤い風船コンサート」でゲストとして登
場し、「夕暮れ」ほか2~3曲を唄った時である。
高田はやや酩酊気味だったが、調子をくずさず
最後まで唄い、会場の人たちも皆ほっとした顔
を見せたのをよく憶えている。

ところで、彼の仲間だった加川良もつい最近の
4月5日に病没した。
良の声質が好きだった私は2006年5月4日
名古屋・今池のライブハウスTokuzuで「教訓
Ⅰ」の熱唱を聴いたことがある。それとても 
過去の1ページとなってしまった。


閑話休題、この映画のことである。
ごく普通のドキュメンタリー映画であることに
がっかりしたかと言うとそうでもない。
高田渡の「風」を唄う姿と声が胸に迫り、ここ
ろのふるえるのを感じたのだ。
観に行ってよかったと思った。


   頭の上を吹く風よ

 
仲間がいま 何をしているのか きかせてくれ
 彼はいま 何を見ているのか
 もうひとりの彼は 何を考えているのか
 遠くの彼は だれと心を通じているのか

 あのひとの目は 何を言おうとしていたのか
 そんな気持ちが唄に 歌えたらな
 そしたら ぼくはぼくに なれるのにな

     「風」より  作曲・イギリス民謡
             作詞・朝倉勇
                         唄・高田渡

高田渡も、加川良も、その唄声は私のなかに
消えることなく残っている。


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映画 台北ストーリー ☆☆☆☆

■ 原題 「青梅竹馬」(幼馴染) Taipei Story
  1985年 台湾 119分 (シネマスコーレ)
■ 監督 エドワード・ヤン(楊徳昌)
■ 製作 ホウ・シャオシェン(侯孝賢)
■ 脚本 チュー・ティエンウェン(朱天文)
       ホウ・シャオシェン
       エドワード・ヤン
■ 撮影 ヤン・ウェイハン(楊渭漢)
■ 音楽 ヨーヨー・マ(友友馬)
■ 出演 ツァイ・チン(蔡琴)
       ホウ・シャオシェン

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エドワード・ヤン監督の長編第2作目作品。

ホウ・シャオシェン監修による4Kデジタル修復版で
2017年5月から待望の日本初公開。
名古屋では、シネマスコーレ劇場での上映である。

少年野球時代の夢想をなおも引きずる布地商の阿隆。
勤める会社が買収され解雇となったキャリアの阿貞。

急速に近代化・都市化が進む台北。
商機に乗れない人々の心理と行動。

変わりゆく街の風景。
すれ違う感情。

監督ヤンの描く人々の姿と風景に
なぜかくも心を揺さぶられるのだろうか。

私たちは
たとえ変わることを選んだとしても
逆に、変わらないことを望んだとしても
現実は、思惑どおりにならない。
そう思い知らされる。

それゆえ戸惑い
打ちひしがれて
現実を受け入れる。

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その姿を共感をもってみずみずしく映し出し
人を追いやる風景の変貌をあざやかに示す
エドワード・ヤンのフィルム。
それは常に、静かで、しかし激しい。



 
  

DVD M ☆☆☆☆

■ 1931年 ドイツ 99分 (Amazon購入)
■ 監督 フリッツ・ラング
■ 原作 エゴン・ヤコブソン
■ 脚本 テア・フォン・ハルボウ
       フリッツ・ラング
■ 撮影 フリッツ・アルノ・ヴァグナー
■ 出演 ペーター・ローレ

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86年前の映画である。
しかし、今の世の中を描いている。
今の人たちの内のある感情を暴いている。


繰り返される幼女誘拐殺人。
捜査に乗り出す警察と、或る「組織」。

殺人者自身も止められない殺害欲求。
被害家族や世間の人々から噴き出す報復感情。

フリッツ・ラングは
シニカルな笑いと
独特の映像感覚
人間の内にある多様な残酷感情を
あざやかに描き切る。

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映画 パーソナル・ショッパー ☆☆

■ PERSONAL SHOPPER 2016年 フランス 105分
             (センチュリーシネマ)
■ 監督 ケネス・ロナーガン
■ 脚本 ケネス・ロナーガン
■ 撮影 ジョディ・リー・ライプス
■ 出演 クリステン・スチュワート

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この映画を観終えてふと思い出した。
私のスポーツ仲間のある女性が語ったことである。

自分は暗い部屋で人影が動くのをよく見る。
それが近づいてくるので避けようとするが身動きできない。
金縛りになったようだった。
そういうことがあるのは自分は霊感が強いからだと思うの。
その人は仲間の皆にそう話した。

皆は半信半疑の表情で首を傾げた。
私も同じだった。
それは錯視ではないのかと疑った。

でも、霊感の強い人は本当に存在するのかも知れない。
この映画の主人公モウリーンのように。

死んだモウリーンの兄。
彼からのサイン。
それを期待して待っていたはずのモウリーンだったが・・・。


どれだけの観客があのような結末を予期したろうか。
あのラストは一体何を意味しているのだろうか。

WOWOW 狼は暗闇の天使 ☆☆☆

■ 原題「SALVO(サルヴォ)」 2013年 イタリア 106分
                         
(劇場未公開 WOWOW放映)
■ 監督 ファビオ・グラッサドニア
       アントニオ・ピアッツァ
■ 脚本 ファビオ・グラッサドニア
       アントニオ・ピアッツア
■  撮影 ダニエーレ・チプリ

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原題のSALVOとは、主人公でマフィアのヒットマンの名。

それを「狼は暗闇の天使」と邦題にしたのは妙訳だ。


それはさておき、
この作品の特徴は映像がとても暗いことだ。
始めはテレビの画面調節のミスかと思ったほどである。

シーンの長さも非ハリウッド的で軽い驚きを覚える。
しかし、徐々に画面から目が離せなくなった。
ストーリー展開の行方がしだいに気になりだす。

組織とどう折り合いをつけるのか。
少女をどうするのか。


全編が音楽を排した現実音だけで展開していく映画
だからこそ際立つ主人公の行動と表情。

観終えて(映画の堪能を味わった)と気づく異色の
作品。一見の価値を十分に備えた映画である。

映画 マンチェスター・バイ・ザ・シー ☆☆☆☆

■ MANCHESTER BY THE SEA 2016年 アメリカ 137分
                  (ミリオン座) 
■ 監督 ケネス・ロナーガン
■ 脚本 ケネス・ロナーガン
■ 撮影 ジョディ・リー・ライプス
■ 音楽 レスリー・バーバー
■ 出演 ケイシー・アフレック
       ルーカス・ヘッジズ
      
ミシェル・ウィリアムズ

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C・アフレックが素晴らしい!






映画 イップ・マン 継承 ☆☆☆

■ 「葉問3」 2015年 中国/香港 105分
        (センチュリーシネマ)
■ 監督 ウィルソン・イップ
■ アクション監督 ユエン・ウーピン
■ 脚本 エドモンド・ウォン
       チェン・タイリ
       ジル・レオン
■ 撮影 ケニー・ツェー
■ 音楽 川井憲次
■ 出演 ドニー・イェン
       マックス・チャン
      

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おそらく、「葉問3部作最終章」ということになるのだろうか。


50歳を少し過ぎたドニー・イェンは、相変わらず切れ
のよいカンフーアクションを見せる。そして妻想いの
人でもある詠春拳の達人を好演している。

この映画の印象はすがすがしい。
登場する悪役たちは非道卑劣な輩たちではなく、己

の肉体で勝負することに固執でもしているのかと思う
くらいある意味フエアな男たちとして描かれている。

マイク・タイソンが演じる不動産屋フランクにしても勝
負のルールは守るし、負ければきっぱり認める。

本当に不動産屋なのだろうかと疑いたくなるような
格闘狂のナイスガイなのだ。

いずれにせよ、葉問の妻ウィンシンの存在がこの映
画では大きい。

この映画がカンフー映画らしからぬ味わい深いラス
トシーンを持ったのもそれを示して興味深い。



DVD さすらい ☆☆☆☆

■ IL GRIDO(原題 「叫び」) 1957年 イタリア 102分
                  (TSUTAYA レンタル)
■ 監督 ミケランジェロ・アントニオーニ
■ 脚本 エンニオ・デ・コンチーニ
       エリオ・バルトリーニ
       ミケランジェロ・アントニオーニ
■ 撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
■ 音楽 ジョヴァンニ・フスコ
■ 出演 スティーヴ・コクラン
       アリダ・ヴァリ
              ドリアン・グレイ
        
ベッツィ・ブレア

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北イタリアを東に流れるポー川の流域。

妻となるはずだったイルマから別れを告げられた労働者アルド。
娘とさすらう男の寒々とした姿。

アルドは昔の女からガソリンスタンドの女へ、そして別の若い女へと。
しかし、またさすらいへ。

閉鎖中の工場の鉄塔。
イルマの叫び。

アルドの求めたものは何だったのだろう。
イルマの求めたものは何?

男にとって女とは。

女にとって男とは。
 
アントニオーニが没して10年めの7月がもうすぐ来る。

 

NHK BS 夏の庭 ☆☆☆

■ The Friends 1994年 113分 (NHKBS 放映)
■ 監督 相米慎二
■ 原作 湯本香樹実
■ 脚本 田中陽造
■ 撮影 篠田昇
■ 音楽 セルジオ・アサド
■ 出演 三國連太郎
       坂田直樹 王泰貴 牧野憲一

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相米慎二監督の才気が随所に光る好編。


トップシーンは、雨の中の少年サッカー試合。
相米流の長回し撮影は、映画の中に観る者を徐々に誘う。

仲良し三人組も悪くはないが、彼らに時々まとわりつくカメラ
小僧が可笑しい。
あのキャラクターは相米慎二の投影かも知れないし、この
映画製作に係わった映画人たち全員のそれかも知れない。

相米映像ワールドのきらめきが眩しい。
たとえば、少年たちが井戸を覗き込むショット。
たとえば、古香弥生(淡島千景)がいっしゅん正気にもどるショット。
たとえば、喜八(三國連太郎)の廃屋を掃除していくショット。
そこには、映画の冒険が確かにあるのだ。



DVD 味園ユニバース ☆☆☆☆

■ 2015年 103分
■ 監督 山下敦弘
■ 脚本 菅野友恵
■ 撮影 高城風太
■ 音楽 池永正二
■ 出演 渋谷すばる
       二階堂ふみ
       康すおん

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主演の二人の存在感が私たちを圧倒する。

山下敦弘の演出は怖いほどに生々しい。

その生々しさの中に
人間という生きもののしぶとさと、哀しみと、
自暴自棄さと、自分を見出す力強さを描いている。

山下敦弘は健在である!